1992 Fiscal Year Annual Research Report
須恵器断面の電子顕微鏡観察ならびにX線透過試験による須恵器製作技法の復原
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04451080
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
田辺 昭三 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (90068817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 俊秀 京都芸術短期大学, 文化財科学研究所, 助教授
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Research Abstract |
須恵器の杯〔身〕を試料として、断面、および底面と体部側面の観察を行なった。まず肉眼による表面の凹凸の検討を行ない、次にエメリー紙および金属研磨用アルミナ粉末で研磨し、観察面を平滑に仕上げ、光学顕微鏡および電子顕微鏡を用い観察を行なった。底面と側面の試料は外側を研磨し、観察面とした。肉眼の観察結果で、水平方向に平行に走る数本の凹凸が存在する例がいくつかみられた。これを断面で観察すると、垂直方向では壁の両面が直線にならず波を打つ曲線状になる。この点に着目し粘土紐積み上げ法との関連を検討した。大阪府陶邑TK23出土の例で口縁部から底面にかけての断面試料を作製し光学顕微鏡で観察した。この結果、2つの平たい紐状の塊を接合し、接合面は斜めに合わせて作られていることが、器体に含まれる粒子の並び方向と、横長の気泡の方向性から確認できた。電子顕微鏡を用いこの気泡を測定すると、幅は約10ミクロンのものが非常に多く、長さはばらつきがあった。また肉眼観察では、紐状の塊の幅は約2.5cmで中央に凹部を持っている。他の試料の観察でも、底部が2つの平たい紐からなる例は、20%以上の頻度で確認できており、出土遺物であることから良好な試料を確保することも容易できない点を考慮すれば、頻度は増すであろう。今後、今年後の成果を踏まえ本研究を継続し、X線の透過試験で紐の接合面を確認する作業、胎土の化学組成を作製試料と比較検討する作業をさらに進めたい。
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