1992 Fiscal Year Annual Research Report
広告コミュニケーションの日米間の相違の社会学的研究
Project/Area Number |
04451095
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有馬 哲夫 東北大学, 教養部, 助教授 (10168023)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
トッド ホールデン 東北大学, 教養部, 助教授 (60207058)
石幡 直樹 東北大学, 教養部, 助教授 (30125497)
|
Research Abstract |
本研究によって次のことがわかった。 テレビコマーシャルは、もはや約25%の日本の視聴者にとって、単なる商品の宣伝や情報提供の手段というよりも、それ自体が鑑賞や批評の対象になっている。しかも、この率は高くなる傾向にある。この結果、視聴者はテレビコマーシャルの宣伝内容よりも、そこに描かれる社会的背景や問題について高い意識を持ち始めている。特に、女性蔑視の兆候の見られるヌードや、階級意識に訴える乗用車や家のコマーシャルに対しては、かなり敏感に反応しているのがうかがえた。テレビコマーシャルの批評を通じて社会批評をしているといってもよいほどである。このような、批評的視聴者が、次第に日本人の女性差別、階級意識、あるいは人種的偏見やその逆の人種的劣等感をコマーシャルの中に読み取り、これを批判することによって、これらに対する意識を少しづつ変えつつある。日本にはアメリカのような、性別、階級、人種による摩擦は余り存在しないが、将来テレビコマーシャルの制作者は、現在アメリカの同業者がはらって同じ注意をはらわなければならなくなる可能性がある。そして、それは広告の表現内容にも影響すると考えられる。 表現様式について言えば、日米間で特に比較広告の頻度と形式について大きな相違がみられるのは、両国の社会的システムが大きく影響していることがわかった。この社会システムとは、法規制、広告制作者の自主規制、放送局の自主規制、そして長い付き合いを重んじる日本の取引習慣である。これらの社会システムの相違の結果、アメリカでは比較広告が、情報公開と消費者保護という観点から奨励され、日本では不当競争による独占禁止という観点から規制される傾向にあるのである。
|