1992 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀のイタリア経済学におけるイギリス経済学の受容
Project/Area Number |
04451105
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
堀田 誠三 名古屋経済大学, 経済学部, 助教授 (40144109)
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Keywords | 18世紀 / イタリア経済学 / イギリス経済学 |
Research Abstract |
ミラノで開催される第11回国際経済史学会(1994年8月)の報告集のためにBritish Economic Thought in Eightennth-Century Italyを作成・送付した。ここであつかったのは、マンの『外国貿易によるイングランドの財宝』(1664年)のイタリア語訳(1758年)、ヒュームの『政治論集』(1752年)ヘのジェノヴェージによる評注、ダンドロによるイタリア語訳(1767年)、スミスの『国富論』(1776年)にイタリア語訳(1790-91年)であり、『国富論』の場合には、イタリア語訳の底本となったブラヴェによるフランス語訳(1781年)の諸版も参照した。 マンのイタリア語訳は、ジェノヴェージによる『ケアリーのイギリス商業史』(1757-58年)のなかにおさめられたものである。この刊行年は、7年戦争にかさなっており、このことが重要である。ジェノヴェージは、7年戦争によるイギリスの経済的覇権の確立と、その裏にある戦費調達のための累積債務問題を直視していた。しかし、イタリアにとっての課題は、イギリスをモデルとする社会の商業化の促進である。そのことを表現するのが、上記の諸翻訳にみられるイギリス経済学の摂取への努力である。そして、その過程を追跡するなかでうかびあがるのは、イギリス経済学における地主への肯定的評価は無視ないし軽視され、地主の特権にかんする歴史的事実への言及が、誤解によって、地主にたいする批判に転化するという傾向である。これは、18世紀のイギリスとイタリアにおける土地所有と地主の歴史的・社会的性格の相違を反映している、と考えられる。つまり、土地所有と地主は、イギリスでは商業社会に対応して、ブルジョア化しているが、イタリアでは、商業化の障害物となっているのである。
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