1993 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀イタリア経済学におけるイギリス経済学の受容
Project/Area Number |
04451105
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Research Institution | Nagoya Economics University |
Principal Investigator |
堀田 誠三 名古屋経済大学, 経済学部, 助教授 (40144109)
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Keywords | アダム・スミス / デイヴィット・ヒューム / イタリア経済学 |
Research Abstract |
ヒューム『政治論集』のイタリア語部分訳には、大別して、1767年版、1774年版、1798年版がある。1767年版については、一橋大学社会科学古典資料センターおよび中央大学所蔵ヒューム・コレクションを利用して、翻訳は1760年版『著作集』によっておこなわれ、1764年版『著作集』での追補が部分的にとりいれられたことが、確認できた。翻訳が実際におこなわれた時期の推定のためには、エンディンバラのヒューム文書を調査する必要がある。1774年版は、国内に所蔵されておらず(マイクロフィルムでも)、調査継続中である。1798年版については、大阪大学所蔵本および大阪商業大学所蔵本を調査の結果、両者は組版は同一ながら扉の一部がことなることが判明した。 翻訳の特徴は、第1に、『政治論集』のうち、政治関係の論説ではなく経済関係の論説のみが訳出されていること、第2に、原本のうち地主の社会的役割について肯定的な箇所については、原本の論調をよわめる訳文となっていることである。後者については、訳者の序文などの主張に対応するとみられる。 『国富論』については、特に第5編における教会関係の記述において、いちじるしい特徴がみられた。イタリア語訳は、フランス語訳の逐語訳といえるのだが、ローマ・カトリック教会を非難した箇所は、フランス語訳にあるにもかかわらず、イタリア語訳では、おそらく意図的な削除、訳文変更がおこなわれている。さらに訳注をつけて、プロテスタントである著者の叙述を鵜呑みにするなと忠告している。これらは、18世紀イタリア社会の理解のための貴重な事例である。
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