1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04451145
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中西 智子 三重大学, 教育学部, 助教授 (20093122)
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Keywords | 楽譜 / 読む / 眼球運動 / 滞留時間 / 注視点 / 片手演奏と両手演奏 / 先読み |
Research Abstract |
平成4年度に購入したトークアイは、実験を開始するまでに、まず、精密機器である故の機器の微調整を必要とした。このため、当初計画した通りに実験研究は進まなかった。さらに、2年計画の初年度である事情(予算の関係)から、設備備品が揃わずに、満足な実験はできなかった。とりあえず、初年度予算で購入できたトークアイで明らかになる「眼球運動視察時注視点」についてのデーターを集めた。 機器の微調整で大幅な遅れはあったものの、研究目的にそって、教育学部学生3年生を被験者にし、ピアノ演奏時における彼らの楽譜を読む時(読譜時)の眼球運動を、(1)注視点の位置 (2)注視点の滞留時間 (3)注視点の軌跡、の3点に限って記録した。そして、既存の備品パーソナルコンピューターを使って眼球運動注視点を図にした「トークアイデーター解析システム」によって考察をおこなった。その結果 1 自分(被験者)の弾きやすいテンポは、片手演奏(右手・左手の片手づつの演奏)時と、両手で本来の楽譜通りに演奏する場合とでは、演奏時間に差異があることが判明した。それは、楽譜からの情報を“音符の数"で読譜しているという被験者の認識からの結果であろうと考えられる。音楽のテンポは音符の数ではなく、曲としての“音楽の全体的なまとまり"を把握していないという事実であって、このことは、課題曲を素読(演奏する前に読譜すること)の時点で音楽全体のイメージをつかんでいないということである。この事実は、教育学部の学生には読譜力を育成するために『練習』という学習時間が必要であることを示している。ここでいう『練習』とは、ピアノを弾く練習を示すのではなく、読譜の練習が重要であると考えられる。読譜の練習が充分進んだ場合には、楽譜の先読みによって課題曲のイメージ通りの演奏が可能となると考える。
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