1993 Fiscal Year Annual Research Report
偶数・偶数ナイロン単結晶における二次元系相転移の解析と臨界点の観測
Project/Area Number |
04452041
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 孝 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (60107159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 孝 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (70027861)
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Keywords | ナイロン66結晶 / 一次相転移 / 二次相転移 / 臨界現象 / 平均場近似 / 比熱界常 |
Research Abstract |
ナイロン66結晶は200℃近傍で三斜晶から擬六方晶に変化する。この現象は、既に1942年に発見されていたが、相転移の可能性も含めてその異方的な熱膨張の分子論的機構の本質は未解決のまま残されていた。 私達は、この2年間にわたる研究により、0.05重量%の1,4ブタンジオール希薄溶液から、145℃で析出させたナイロン66単結晶は大気圧下で二次相転移的特徴の濃い一次相転移を示すこと、0.5重量%の1,4ブタンジオール希薄溶液から145℃で析出させた場合、常圧下では連続的な構造変化であり100MPa以上の圧力下で不連続な一次相転移になる、つまり0〜100MPaの圧力範囲に臨界点が存在することに加え、192℃における圧縮率がほぼ発散するという臨界現象的側面を、単独重合体(homopolymer)結晶において初めて見い出した。また、平均場近似により、比熱異常の計算結果が得られることを分子論的に明らかにした。さらに相互作用パラメータを簡単化でき、厳密なエネルギー計算の可能なナイロン46を比較物質として選び、同様の手法で実験を行った結果、異方的な熱膨張は生じるが、比熱異常は観測されなかった。エネルギー計算の結果、その違いはナイロン66結晶とナイロン46結晶の分子内・分子間相互作用エネルギーの差異によるものであることを示し、ナイロン46との比較から、その構造変化を誘起するのは、NH基間のメチレン鎖の分子運動が主体となっていることを明らかにした。 以上の結果は、高分子結晶としては始めての、二次相転移と臨界点の厳密な証明・発見であり、理論的取扱が現実の高分子結晶の相転移を、実験結果との整合性を保ちつつ分子論的に簡明に記述できた最初の例であるものと考える。本研究が、現実に存在する二次元系の臨界現象として、今後、相転移の理論分野に大きな刺激を与え、高分子物理学の分野に新たな展開をもたらすことを期待するものである。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Itoh,Takashi: "Interpretation for Different Features of Structural Change in Even-Even and Even Nylon Crystals at Elevated Temperatures" Reports on Progress in Polymer Physics in Japan. 35. 217-220 (1992)
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[Publications] Itoh,Takashi: "First-Order Phase Transition in a Nylon 66 Crystal" Journal of the Physical Society of Japan. 62. 407-410 (1993)
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[Publications] Machitani,Yasuhiko: "Phase Transitions in Even-Even Nylon Crystals" Reports on Progress in Polymer Physics in Japan. 36. 171-174 (1993)
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[Publications] Itoh,Takashi: "Crystalline Phase Transitions in Polymers" Current Polymer Research. 40 (in press). (1994)