1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04452052
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
冨吉 昇一 愛媛大学, 工学部, 助教授 (50005922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 長雄 愛媛大学, 教養部, 助教授 (00093914)
矢野 忠 愛媛大学, 工学部, 教授 (50036240)
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Keywords | 有機磁性体 / 反強磁性体 / 中性子回折 / スピン構造 |
Research Abstract |
今年度は有機反強磁性体であるTriphenylverdazyl(TPV)について単結晶試料を作製し、その磁気的性質を磁化測定、中性子回折により詳しく調べた。まず、単結晶作製であるが、昨年度に引き続き再結晶法を試み、アセトン溶液中に析出させる方法を用いることにより、大きくしかも高品質のTPV単結晶を得ることに成功した。結晶は六角形の板状をしており、色は黒緑色で、一番大きいものは18mgもあり、有機ラジカルとしては非常に大きく、しかも、モザイク度も良く高品質の結晶育成がこの方法で可能となった。 磁化測定は試料振動型磁力計、及びSQUID磁力計を用いて行った。単結晶試料の色々な方向に磁場を掛け測定した結果、これまで得られていた粉末試料の結果に比較して格段に良いデータが得られた。その結果、三次元的磁気秩序の発生に伴い弱強磁性が発生すること、磁化曲線は殆どヒステリシスを示さないこと、ネール温度以上でも一次元的なshort range orderのために5K付近に帯磁率がなだらかな山を持つこと、スピン方向はb-軸方向であること等が明らかになった。 中性子回折実験によりスピン構造の決定を行った。ネール点以下の温度で測定した結果、(101)ピークが磁気反射であることが明らかになり、また、他の磁気反射が弱いことより、TPVの磁気構造は各TPV分子が1μ_Bの磁気モーメントを持ち、c-軸方向に進むチェインに沿って反平行にスピンが並ぶ構造になっていることを解明した。スピンの方向はb-軸方向でありこれは磁化測定で決定した方向と一致する。今回はこの様に有機化合物であるTPVについて、磁化測定より反強磁性磁気秩序の発生に伴い弱強磁性が生じること、中性子回折よりスピン構造の決定を行い、そのミクロな磁性的性質を初めて明らかにした。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] S.Tomiyoshi 他: "Weak Ferromagnetism and Long Range Antiferromagnetic Ordering of Organic Radical Compound 2,4,6-Triphenylverdazyl" Phys.Rev.B.49 (掲載予定). (1994)
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[Publications] N.Azuma 他: "Molecular and Crystal Structures of Complexes of Stable Free Radical BDPA with Benzen and Acetone" Bull.Chem.Soc.Jpn.Vol.67. 67. 31-38 (1994)
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[Publications] N.Azuma 他: "Molecular and Crystal Structures of 9-[α(9H-Flouren-9-ylidene)-4-chlorobenzyl]-9H-Flouren-9-yl;an Organic Antiferromagnet with T_N=3.25K" J.Chem.Soc.Perkin Trans.2 (掲載予定). (1994)