Research Abstract |
多結晶構造体の局部的な力学的挙動は結晶粒の粒度,方位および粒界の状態などの因子に影響される.特に結晶粒界近傍の挙動を調べるため,昨年度はハイビジョン対応のCCDカメラおよび画像処理装置を用いて,ひずみ測定システムを組み立て,その精度を検証した.これに引き続き,今年度は実際に多結晶構造を有する試験片に引張り荷量を与え,その力学的挙動を調べることに主眼を置いた.結晶粒界近傍のひずみを測定するため,まず,以下の手順で結晶粒の粗大化を試みた.試験材料には厚さ3mmの純アルミニウム(99.99%)板を用い,長さ100mm,幅20mmの引張り試験片を作成し,300℃で30分の予熱の後,1.5%の引張り予ひずみを与え,さらに,620℃で24時間の結晶粗大化焼きなましを行った.これにより,結晶の粗大化が実現できる予定であったが,理想的な粗大化はできず,1mm以下の結晶粒しか作成できなかった.現在,温度,加熱時間,材料等を含め,検討している段階である.なお,作成した試験片を用い,15%のひずみまで引張り試験を行い,1%毎にモアレ画像を取り込み,各点のひずみ測定を行い,伸び計データとの比較を行った.今回は結晶粒が小さく,粒界近傍の挙動を議論できる結果ではないが,今後,結晶粒の粗大化を実現できれば,その議論も可能となるものと思われる.また,実験のシミュレーションとして,構造体を有限要素法によりモデル化し,局所的な応力,ひずみを求めるプログラムを開発し,解析を行っている所である.今年度は,刃状転位を有限要素法によってモデル化し,その適用範囲を調べるとともに,結晶粒界を刃状転位で置き換えた結晶三重点近傍の有限要素モデルを作成し,その近傍の局所的な応力およびひずみを求めた.これにより多結晶体の微視的な性質が定性的かつ定量式にある程度明らかとなった.今後,実験結果との比較を行うことで,多結晶体の力学的挙動を明らかにしたいと考えている.
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