1992 Fiscal Year Annual Research Report
磁気計測による細胞内の小器官の運動と繊維構造の関係の研究
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04452212
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
根本 幾 東京電機大学, 理工学部, 教授 (40105672)
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Keywords | 細胞内運動 / 生体磁気 / アクトミオシン系i / 細胞磁気計測 |
Research Abstract |
本研究の目的は、磁性粒子を細胞内に導入し、それを外部から色々な強さやモードの磁界で操作したり、その後細胞から発生する磁界(これを簡単に細胞磁界と呼ぶことにする)を計測することにより、細胞内の運動のメカニズムを探ることである。細胞磁界を測定するには、感度の高いフラックスゲート型磁束計を用いるが、外部磁気雑音が問題で、制作した二重のパーマロイシールドでも十分なSN比が得られないので、材料を磁束計のプローブの前で毎秒12-13回転させ、得られる信号を同期検波する方式として、パソコンですべて制御する装置とソフトを開発した。使った細胞はハムスターの肺胞マクロファージである。これに球形で直径の分散の非常に小さいFe_3O_4粒子を食作用により細胞内に導入する。この粒子はドイツの放射線・環境研究所から入手した。粒子は細胞に取り込まれ食胞中に存在するようになる。細胞に外部から0.1-0.3Tの強いパルス的な磁界を加えると、食胞内の粒子が磁化され細胞磁界が発生するが、これは数分の時定数で減少する緩和を見せる。この緩和は食胞のランダムな回転運動の大きさを表わしている。本研究で用いた粒子はその大きさが非常に均一なので、得られた緩和曲線はかなり理論的な指数関数に近く、従って実験結果の定量的な解釈がし易くなった。すでに一度強く磁化された食胞(実際は粒子)に弱い磁界を加えると、磁界の方向に食胞の磁気モーメントを整列させようというエネルギーと、食胞をランダムに動かすエネルギーが釣り合う平衡状態を作り出すことができ、これによって食胞を動かしているエネルギーは熱じょう乱κTより2桁大きいことが分かった。この方法によって、食胞の周囲を液体と見なしたときの、見かけの粘性係数も測定できる。細胞内ATP濃度を変えたり、繊維構造を破壊する薬剤を加えてこれらの実験を行うことにより、食胞の運動のメカニズムに対する新たな知見が得られると期待される。
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