1993 Fiscal Year Annual Research Report
高励起リュードベリ状態を利用した高分解能高電子分光法の開発とカチオンの分光研究
Project/Area Number |
04453013
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Research Institution | School of Science and Engineering, Waseda University |
Principal Investigator |
藤井 正明 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (60181319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 光男 早稲田大学, 分子科学研究所, 所長 (20013469)
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Keywords | 光電子分光 / 気相電子スペクトル / 多光子過程 / リュードベリ状態 |
Research Abstract |
p-ジフルオロベンゼン分子に対してS_1状態を起点とする2光子パルス電場イオン化光電子スペクトルを測定した。装置は昨年度完成させた磁気遮蔽等を装備しない簡易な分光装置を用いた(以下パルス電場イオン化をPFIと省略する)。S_1状態を起点とする2光子PFI光電子スペクトルは初めて得られたスペクトルである。これを解析して本研究で開発したPFI光電子分光法では遷移に要する光子数に応じて異なる対称性のリュードベリ状態が生成している事を明らかにした。次に2光子PFI光電子スペクトルに対するレーザー光の偏光効果を測定した。試料は上と同じくp-ジフルオロベンゼン分子を用いた。2光子遷移に用いるレーザーの偏光を直線偏光から円偏光へ変化させたところ観測されるバンド(カチオンの振動準位に対応)の相対強度が劇的に変化した。そこで直線偏光を用いた場合と円偏光を用いた場合の強度比を主要なバンドに対して測定した。その結果、全対称振動のバンドでは円偏光を用いた場合、直線偏光を用いた場合に比べ40%にバンド強度が低下するが、非全対称振動準位ではほとんど変化しないことが分かった。従ってこの偏光効果を用いて光電子スペクトルで観測されたバンドの対称性を帰属する事が可能と考えられる。従来光電子分光法では観測では観測したバンドの帰属が困難であり、中性分子での帰属や計算にもっぱら頼っていたことを考えると偏光効果による帰属法は極めて重要であり、現在出版準備中である。上記に加え本分光法を用いたカチオンでの大振幅振動解明も継続し、テトラフルオロベンゼン分子のバタフライ振動を観測してポテンシャルを解析した。 以上のようにリュードベリ状態を利用した高分解能光電子分光法(PFI光電子分光法)を偏光効果と組み合わせ、装置簡易・高分解能という特長に加え従来困難であった対称性帰属法にまで発展させることに成功した。
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