1993 Fiscal Year Annual Research Report
高度に変形したベンゼン環をもつ多環化合物の合成と反応性に関する研究
Project/Area Number |
04453018
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 孝 北海道大学, 理学部, 教授 (20029482)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 進也 北海道大学, 理学部, 教授 (40029400)
|
Keywords | シクロファン / デュワーベンゼン / 歪み化合物 / 不飽和多環化合物 / 光反応 |
Research Abstract |
高歪ベンゼン誘導体の合成研究。下記の理論計算に基き、熱異性化による[1.1]パラシクロファンIIの生成およびそのラジカルカチオンとジカチオン種への変換を行なうべく、無置換ビスDewarベンゼンIの合成を遂行したが完了するに到らなかった。今後、継続して研究を進める予定である。昨年度に合成したIVの低温グラス中での光異性化は、330,410nmに吸収極大を示す新しい化学種を与えた。その光反応挙動は生成種がVIであることを示唆する。生成種は単離できる熱安定性を欠くため、捕捉反応による構造の確認を進めている。また、その特異なUV/VIS吸収スペクトルは、構造上直交したベンゼン環とエンジオン部の相互作用を示唆する。IVと同様、強い電子求引性側鎖をもつVIIIの合成と相当するベンゼン誘導体への光異性化を行ない、その相互作用の解析を進めている。一方、Vの光異性化はIXを与え、VIIへの開環異性化は認められないことが明らかとなった。Vの光励起状態での速い系間交差が理由と考えており、IXへの異性化経路に検討を加えた。当初に計画したVの光異性化によるVIIの生成は進行しないことが明らかになったので、Vの熱分解によるVII、さらにはXへの変換を試みている。 理論計算による構造と反応性の解析。昨年度に生成を確認した[1.1]パラシクロファンIIについて理論計算による構造と電子状態の解析を行ない、関連化合物との比較検討を行なった。その結果はIIがI、IIIよりも熱力学的に安定であることを示し、IIのIからの生成には光異性化よりも熱異性化が優れている可能性を示唆した。また、近接位に強制された二つのベンゼン環のπ電子間の強い反発によるHOMOレベルの上昇を示し、その特性を利用する研究への新しい展望を開いた。
|
-
[Publications] Takashi Tsuji: "〔1.1〕Paracyclophane.Generation and Spectroscopic Characterization of the Bis(methoxycarbonyl) Derivative" Journal of the American Chemical Society. 115. 5284-5285 (1993)
-
[Publications] Masakazu Ohkita: "Single Step Synthesis of 2-Norbornanone Ethylene Acetals from 2-Cyclopenten-1-one Ethylene Acetals" Journal of Organic Chemistry. 58. 5200-5208 (1993)
-
[Publications] Masakazu Ohkita: "Single Step Synthesis of Norbornan-2-one Dithioacetals from Cyclopent-2-en-1-one Dithioacetals and Dienophiles" J.Chem.Soc.,Chemical Communications. 1676-1677 (1993)