1992 Fiscal Year Annual Research Report
4配位ホウ素化合物のホウ素原子上での置換反応に関する研究
Project/Area Number |
04453020
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
今本 恒雄 千葉大学, 理学部, 助教授 (10134347)
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Keywords | 求核置換反応 / ホスフィンボラン / ホウ素アニオン / 4配位ホウ素化合物 / 親電子置換反応 |
Research Abstract |
炭素よりも原子番号が1小さいホウ素は、4配位化合物であるアート錯体を形成すると4配位炭素原子と等電子的になる。このように電子配置として等価なホウ素アート錯体は、4面体構造を有するなどの点で4配位炭素化合物と構造的に類似している。しかしながら、ホウ素原子上には負の形式電荷が存在している点で、ホウ素原子上での置換反応は炭素原子上での反応とはかなり異なるものと予想され、これらの点に関して大きな関心がもたれる。しかしながら、ホウ素原子上に脱離基をもつホウ素アート錯体の合成が困難であるが故に、この分野の研究がほとんど行なわれていなかった。我々はホスフィンボランの特性を生かせば、従来困難と考えられていたホウ素原子上に脱離基を有する4配位ホウ素化合物を合成でき、本研究を遂行できるものと考えた。 まず最初に対称性のよいトリアルキルホスフィンボランのホウ素原子上に塩素、ヨウ素、メシラート基、トリフラート基を導入した。これらの誘導体はチオラートやリンアニオンと容易に反応して対応する置換生成物を与えた。一方、有機リチウム試剤やグリニャール試剤とは反応しなかったが、有機銅試剤とは反応し、対応する置換生成物を与えた。これらの反応によって従来の手法では得難い有機ホウ素ホウ素化合物が合成できることがわかった。続いてこれらの求核置換反応の立体化学を明らかにすることを目的として、ホウ素原子上に不斉中心を有する光学活性ホスフィンボランの合成を試みた。標的化合物は著しく不安定であり、現在までのところ単離には成功していない。しかしながら、この研究の過程で従来例のない光学活性リンアニオンを発生させることに成功した。さらにこれらの実験を行いつつ、分子モデリングシステムを用いて4配位ホウ素の電子状態とエネルギー状態の計算を行った。その結果、ホウ素原子上の形成電荷は著しく非局在化していることが判明した。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 今本 恒雄: "Supnthesis and Reactions of Optically Active Phospine-Boranes" Heteroaton Chemistry. 3. 563-576 (1992)
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[Publications] 押木 俊之: "Umprecedented Stereochemistry of the Electrophilic Arylation at Chiral phosphorus" Journal of the American Chemical Society. 114. 3975-3977 (1992)
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[Publications] 小出 康弘: "New Chiral Lanthamide Compleies with Optically pure Ethandiylbis (t-butylphenyl phosphine oxide)" Journal of Alloys and Compounds.
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[Publications] 今本 恒雄: "ホスフィンボランの合成と反応" 有機合成化学協会誌. 51. 223-231 (1993)
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[Publications] 今本 恒雄: "ランタノイドの関わる有機合成" 季刊化学総説. 17. 108-116 (1993)
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[Publications] 今本 恒雄: "Symthesis and Reactions of New phosphine-Boranes" Pure and Applied Chemistry. 65. 655-660 (1993)
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[Publications] 今本 恒雄: "Optically Actiue phosphorus Comounds,in Organophosphorus Compounds" Marcel Dekker, 53 (1992)
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[Publications] 今本 恒雄: "Lanthanides in Organic Synthesis" Academic press,