Research Abstract |
先ず初めに電極として用いる透明導電性のインジウム・スズ系酸化物(ITO)薄膜について検討した。原料として塩化スズ及びインジウムを用い,溶媒としてアセチルアセトン,エタノール及びグリセリンを用いて原料を溶解させゾル溶液を作製した。この溶液にガラス基板をディップして乾燥後,700℃の熱処理によりITO薄膜を作製した。次に,この薄膜に WO_3薄膜を重ねるために,原料として5(NH_4)_2O・12WO_3・5H_2Oを用い,硝酸, H_2O_2を加えて溶解させ,n-プロパノール,エチレングリコール,ホルムアミドの溶媒を加えて攪拌しゾル溶液を作製した。この溶液に上記で作製したITO薄膜をディップして膜を付け乾燥後,400℃の熱処理により WO_3薄膜を得た。ITO及びWO_3の膜厚とディップ回数との間には,直線関係が見られ,作製したITOとWO_3膜は,それぞれ3回のディップを行ったもので膜厚は,ITO膜が0.09μm,WO_3膜が0.15μmであった。これらの膜の透過率は,良好であり透過光領域(800〜400nm)で,94%以上を示した。このITO上に作製したWO_3膜と対電極にITO薄膜が付いたガラス板を用い,この電極間距離を40mm,電極面績を100mm^2として直流電圧を印加して,着色,消色の実験を行なった。電圧印加時間を10秒間とし,各々の印加電圧と着色及び消色の透過率の変化について,検討した。その結果,印加電圧が4Vまでは急激な透過率の減少はみられなかったが,4Vから14Vの間では,印加電圧と透過率の減少の間に線形性が見られた。しかし,8V以上の印加電圧で着色を行なったWO_3膜に逆電圧を加えて消色を行なった所,完全な消色が観察されなかった。この結果から完全に着色,消色を行なえる可逆電圧は,6Vと観察された。ITO及びWO_3膜は,非常に良好であることから,継続の研究では,電極間を狭くしたコンパクトセルを用い,高濃度の電解質溶液の検討と,応答速度を上げるための検討を行なう。
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