1992 Fiscal Year Annual Research Report
高選択的合成触媒能を有する修飾シクロデキストリンの開発
Project/Area Number |
04453085
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小宮山 真 東京大学, 工学部, 教授 (50133096)
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Keywords | シクロデキストリン / フェノール / ホルムアルデヒド / 分子複合体 / パラ選択性 |
Research Abstract |
広範な有機合成反応に対して選択的な触媒能を持つ一連の修飾シクロデキストリンを開発することを目的として、反応系内に生成する修飾シクロデキストリンと反応基質との複合体の構造を物理化学的手法により決定し、これと選択的触媒能との関係を定量的に評価することにより、分子設計に有用な知見を集積した。 申請者がすでに明らかにしている、シクロデキストリンにヒドロキシルプロピル基を導入することにより、フェノールとホルムアルデヒドから4‐(ヒドロキシメチル)フェノールを選択的に合成しうる反応系に対して、NMRならびにUV測定を行い、生成する分子複合体の構造を決定することに成功した。すなわち、複合体中ではシクロデキストリンの一級水酸基側に導入されたヒドロキシプロピル基とホルムアルデヒドとの間に水素結合が形成され、ホルムアルデヒドがフェノールのパラ炭素の近傍に固定される結果、目的とするヒドロキシルメチル化がパラ位で選択的に進行することが明らかとなった。これは、修飾シクロデキストリンによる選択的合成の反応機構を物理化学的に解明した初めての成功例である。また、シクロデキストリンにグルコース基あるいはアミノ基を導入することによっても、パラ選択性が向上できることも見い出した。 以上のように、当初の目的どうり、反応系に生成する複合体の構造を解明し、導入したヒドロキシルプロピル基の機能を明らかにするともに、新たな修飾シクロデキストリンを開発することにも成功した。そこで平成5年度においては、これらの知見に基づいて目的とする合成反応に対して選択適合性能を持つ修飾シクロデキストリンを分子設計する手法を開発し、種々の有用ファインケミカルを選択的に合成する反応系の確立をめざす予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] M.Komiyama,S.Sawata,andY.Takeshige: "Cooperation of cyclodextrin and alkali-metal halide for regio-selective cleavage of ribonucloeside 2´,3´-cyclic phosphates" J.Am.Chem.Soc.114. 1070-1074 (1992)
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[Publications] S.Sawata and M.Komiyama: "Potassium fluoride for the promotion of β-cyclodextrin-induced regioselective P-O(3´)cleavage of adenosine 2´,3´-cyclic phophate" J.Phys.Org.Chem.5. 502-506 (1992)