1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04453135
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 五十麿 東京大学, 農学部, 助教授 (00012013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 正敏 東京大学, 農学部, 助手 (50237278)
柳沢 忠 宇都宮大学, 農学部, 教授 (90134262)
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Keywords | 雄性不稔(イネ) / ジベレリン / ジベレリングルコシド |
Research Abstract |
温度感応性雄性不稔系統PL12は、栽培品種「レイメイ」より作出され、減数分裂期に30℃以上の高温にされされると花粉が形成されず、稔性を失う。厳密に温度制御して栽培したPL21とその親株である「レイメイ」の稔実率と葯の内生ジベレリン(GA)の種類と含量を分析した結果、レイメイおよび稔実率90%以上のPL21では、葯特異的なGAであるGA9(レイメイ;95ng/g dwt,PL21;121ng/g dwt)とGA4(レイメイ;3800ng/g dwt,PL21;5500ng/g dwt)が検出された。一方、茎葉部の活性ジベレリンであるGA1とその前駆体GA20は検出されなかった。他方、不稔率100%(稔実率0%)のPL21の葯からは、GA9、GA4、GA20、GA1のいつれも検出されなかった。このことから、減数分裂期に高温にさらされた結果、葯におけるGA生合成能が失われ、花粉の分化・発達に異常をきたした可能性と、葯特異的に検出されるGA9やGA4は、花粉の分化・発達後に、花粉で生成される可能性とが考えられた。前者の可能性を想定し、減数分裂期に高温処理したPL21に、GA4を投与し、稔性が回復するか否かを試験したが、稔性の回復は認められなかった。しかしながら、GA4処理後、屋外で栽培したため、極めて異常であった1993年の気象を考えると、稔性回復実験の結果を、そのまま受け入れることには問題があり、1994年に再試験を行う予定である。 ニホンマサリより由来の雄性不稔系統においては、GA4に伴って葯特異的に検出される抗GA4抗体に反応する物質の特定を行い、新規のGA配糖体、17-glucosyl-16α、17-dihydroxy-16,17-dihydroGA4であることを明らかにした。このようなジベレリン代謝経路は、これまでイネの他の器官では認められていない。イネの葯においては、GAの生合成、代謝共に、他の器官とは異なった特有の経路が存在することが示された。
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