1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04453135
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 五十麿 東京大学, 農学部, 助教授 (00012013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 正敏 東京大学, 農学部, 助手 (50237278)
柳沢 忠 宇都宮大学, 農学部, 教授 (90134262)
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Keywords | 雄性不稔 / ジベレリン / イネ / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
イネ葯の内生ジベレリンと雄性不稔との関連を明らかにするために、「ニホンマサリ」の正常株の葯の発達段階におけるジベレリン内生量の変化を追跡するとともに、ジベレリンが葯と花粉のいずれかに局在し、花粉の稔性に関わっている可能性を追求するために、「ニホンマサリ」の正常株と雄性不稔系統の葯中におけるジベレリンの免疫組織化学的分析を行った。 まず、正常株の葯ににおける内生ジベレリンは、葉耳間長11cm以下(出穂前3日以前)ではほとんど検出できなかった。しかし、葉耳間長が12cmを超える出穂1〜2日前からジベレリンA24、A4、A7およびA4の代謝産物であると考えられる16α、17-ジヒドロキシ-16、17-ジヒドロジベレリンA4-17-β-D-グルコピラノシドの内生量が急激に増加し、この時期に葯中におけるジベレリンの生合成、代謝能が一気に高まることが明らかになった。形態的観察によれば、この時期は花粉の澱粉の蓄積する時期と一致し、ジベレリンがこの花粉の澱粉の蓄積に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。 免疫組織化学的にジベレリンの局在性を追求するために、気体試薬を用いてジベレリンを効果的に固定法する方法を開発した。このようにしてジベレリンを固定した試料を常法に従いパラフィン包埋し、ミクロトームで10μmの薄切片にし、抗ジベレリンA1抗体で一次染色し、つづいて、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗ウサギ1gG抗体で二次染色した後、基質であるジアミノベンジジンを加えて発色させ、光学顕微鏡で観察した。 発色は、ELISAでジベレリンの存在が確認されている試料の葯と花糸につながる維管束部分、花粉に観察された。このことは、イネの雄性器官におけるジベレリンの生合成部位は葯近傍の維管束である可能性を強く示唆している。ジベレリンは、葯あるいは花粉の一方に局在することはなく、両者の発達に深く関係しているものと考えられる。 葯の発達に異常の生じる時期と葯のジベレリン内生量の間に深い関係のあることが明らかとなった。
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[Publications] M.Hasegawa,et.al.: "A novel gihberellin glu coside,16α,17-dihydroxy-16,17-dihyoho gibberell in A4-17-0-β-D-glucopyraneside,fromrice anthers." Phyto chemistry. 37. 629-634 (1994)