1992 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的組換えによるプラスミド複製領域の多様化に関する研究
Project/Area Number |
04454001
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
溝渕 潔 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (00092346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森脇 博子 東京大学, 理学部, 助手
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Keywords | 複製領域の構造 / IncFICプラスミド / キメラレプリコン / 遺伝的組換え |
Research Abstract |
プラスミドは一般に不和合性(incompatibility,Inc)によって分類される。不和合性の異なる3種のプラスミドP307(IncF1C),Collb-P9(IncIα),R100(IncFII)の複製領域における塩基配列を比較した結果、P307の複製装置構成遺伝子システムはColIb-P9のそれと90%,また、複製制御システムはR100のそれと88%の高い類似性を示すことを見いだした。しかも、ColIb-P9とR100の類似性は50%以下である。このことは、P307の複製システムがColIb-P9とR100(正確にはIncIαとIncFII)の遺伝的組換えによって形成されたキメラレプリコンであることを示唆している。本研究ではColIb-P9とR100を出発材料として試験管内でP307と類似なプラスミドを人工的に合成することを試みた。その結果、R100複製制御システムの支配下で、ColIb-P9の複製装置遺伝子が作動して、安定にしかもP307と同じコピー数を維持する人工プラスミドの作出に成功した。人工プラスミドの作出条件はColIb-P9の複製開始遺伝子repZの発現をR100の制御システムによって調節することが必要である。ColIb-P9においては、この調節はrepZ遺伝子の上流に存存するrepY遺伝子に担われているが、R100においてもこれと構造は異なるが同じ機能を持つ遺伝子(repA6と命名)が存在することが明かとなった。さらに、この知見を基にして、P307の塩基配列を解析した結果、IncIαとIncFIIプラスミドの組換え位置を推定することも可能となり、そこではP307の複製開始遺伝子を正常に発現させるため、部分的に塩基配列の再編成が生じていることを見いだした。これらの結果は遺伝的組換えによる複製システムの多様性を解明する上で極めて重要であると思われる。
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