1992 Fiscal Year Annual Research Report
細胞同期依存的な発生・分化の機構:粒菌細胞を用いた解析
Project/Area Number |
04454018
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前田 靖男 東北大学, 理学部, 教授 (50025417)
|
Keywords | 細胞性粘菌 / Dictyostelium discoideum / 細胞周期 / 増殖 / 分化 / パターン形成 / PS点 / 集合中心 / リン酸化タンパク質 |
Research Abstract |
細胞性粘菌における多細胞体制の確立過程や細胞集団内での細胞分化・パターン形成の過程に、飢餓処理(発生開始のための処理)の時点での個々の細胞の細胞周期(cell cycle)の内位置が密接に関与している。また粘菌細胞は周囲に栄養源がなくなると、細胞周期G_2期内の1つの持異点(putative shift point:PS点)で増殖サイクルから離脱し分化状態に移行する。そこで、PS点近傍でのタンパク質のリン酸化状態に注目して、細胞がPS点から分化形質発現の方向に移行するための条件について解析した。その結果、増殖/分化の切り換えに関与する可能性の高いリン酸化タンパク質が3つ見い出され、分化へ移行するためには分子量101kDaおよび91kDaのタンパク質のリン酸化レベルが低いことに加えて、32kDaのタンパク質の脱リン酸化が必要とされる可能性が示された。また、プロテイン・キナーゼ阻害剤の一つであるK252aによって増殖期細胞を処理すると、飢餓処理後の発生が著しく促進され、このK252aによる発生促進効果はPS点近傍において特に顕著であることが明らかにされた。これらの事実は、増殖/分化の切り換えにPS点近傍でのタンパク質のリン酸化状態がきわめて重大な意義をもつことを示唆している。細胞周期と細胞分化・パターン形成の関連については、βガラクトシダーゼを有するベクターで形質転換された細胞と温度シフトによる同調培養系を用いて検討した。その結果、PS点直前にある細胞は、飢餓処理されると集合中心として機能するが、多細胞体(移動体)では後部に選別されること、一方、PS点直後の細胞は遅れて集合してくるが、移動体形成に伴って前部に選別されることが明確に示された。このことは、細胞分化・パターン形成におれる細胞周期の重要性を強く示唆するものとして注目される。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] M.Akiyama: "Possible involvements of 101KDa,90KDa,and 32KDa phosphoproteins in the phase-shift of Dictyostelium cells from growthto differentiatior" Differentiation. 51. 79-90 (1992)
-
[Publications] Y.Maeda: "Cross-talks required for the acquisition of development competence in Dictyostelium discoideum" Animal Biolgy. (1992)
-
[Publications] 前田 靖男: "粘菌の形態形成因子" 細胞. 24. 8-13 (1992)
-
[Publications] T.Suzuki: "Cyclic AMP and Ca_<2+> as regulators of zygote formation in the cellular slime mold Dictyostelium mucoroides" Differentiation. 49. 127-132 (1992)
-
[Publications] A,Amagai: "The ethylene action in the development of cellular slime molds: An analogy to higher plants" Protoplasma. 167. 159-168 (1992)