1993 Fiscal Year Annual Research Report
水ストレスによる作物諸器官の急性枯死と関係した水の通導抵抗増加機構の解明
Project/Area Number |
04454042
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Research Institution | Tokyo University of Agric. & Tech. |
Principal Investigator |
平沢 正 東京農工大学, 農学部, 助教授 (30015119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大川 泰一郎 東京農工大学, 農学部, 助手 (80213643)
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Keywords | 水稲 / 白穂 / 品種 / 蒸散速度 / 水ポテンシャル / 水の通導抵抗 / チローシス / キャビテーション(cavitation) |
Research Abstract |
本年度は、高温乾燥強風条件における水稲の白穂発生の実態とその品種間差および白穂発生と関係する水の通導抵抗の増加機構を検討した。 1.白穂は出穂後1〜4日の間にとくに発生しやすいこと、白穂の発生は徐々に起こるのではなく、1時間以内のきわめて短時間に起こることが明らかになった。 2.白穂となった水稲は、穂の水分が著しく低下していた。高温乾燥強風条件では蒸散速度は一時的に増加するが、頴花の白化が進むとむしろ蒸散速度は減少した。白穂が起こるときの水稲の水の通導抵抗は著しく増加し、この水の通導抵抗の増加は、止葉節から穂首節までの水の通導抵抗の著しい増加によって起こることがわかった。 3.1、2の結果から、白穂の原因となる止葉節から穂首節までの水の通導抵抗は高温乾燥強風条件で、穂の蒸散速度が増加し、穂の水ポテンシャル、ひいては茎の水ポテンシャルが低下することが引金となって起こることが推察された。 4.白穂の発生には明らかな品種間差が認められ、コシヒカリ、日本晴では白穂が発生しやすく、アキヒカリ、五百万石、キヌヒカリ、台農67号は発生しにくかった。白穂の発生しやすい品種は、発生しにくい品種に比べて高温乾燥強風条件下で止葉節から穂首節の間の茎の水の通導抵抗が著しく大きくなりやすいことがわかった。 5.白穂となった水稲の止葉節から穂首節までの茎の導管にはチローシスの発生や損傷が認められなかった。このことからこの茎の水の通導抵抗の増加には、茎の通導抵抗の増加に関係するもう1つの要因、すなわち導管内に空気が入り込むキャビテーション(cavitation)が関係していると考えられた。
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[Publications] 飛田 有支: "土壌水分低下に対する反応のダイズ品種間差-エンレイとタチナガハ,HAROSOYとBEESONの比較-" 日本作物学会紀事. 62(別1). 96-97 (1993)
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[Publications] 平沢 正: "能動的吸水の推進力を表わす根圧の測定-水稲とダイズを用いて-" 日本作物学会紀事. 62(別2). 193-194 (1993)
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[Publications] 上原 琢美: "水稲の葉身・小穂におけるABA含量の変化-時期別,葉位別,含水量に着目して-" 日本作物学会紀事. 62(別2). 131-132 (1993)
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[Publications] 平沢 正: "金南風の突然変異系統にみられる萎凋の要因の解析" 日本作物学会関東支部会報. 8. 27-28 (1993)
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[Publications] 富所 康広: "高温乾燥強風条件における白穂発生の品種間差とその要因" 日本作物学会関東支部会報. 8. 29-30 (1993)
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[Publications] 大川 泰一郎: "水稲稈基部の曲げ応力に影響する細胞壁構成成分の品種間差異" 日本作物学会紀事. 62. 378-384 (1993)
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[Publications] 大川 泰一郎: "水稲における耐倒伏性に関係する性質の地上部環境条件による変化とその品種間差" 日本作物学会紀事. 62. 525-533 (1993)