1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04454077
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
波多野 昌二 九州大学, 農学部, 教授 (30038260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 敬久 九州大学, 農学部, 助手 (70190816)
吉本 誠 九州大学, 農学部, 助教授 (90182831)
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Keywords | パン酵母 / 凍結耐性 / 冷凍生地製パン法 / アクチン / 解糖系 |
Research Abstract |
パン酵母の凍結損傷の機構を解明するために通常のパン酵母(D)と耐凍性パン酵母(DFT)について、未凍結および凍結貯蔵後のパン酵母から調整した無細胞抽出液のゲルろ過を行い、解糖系の九つの酵素の溶出パターンを調べた。同時にアクチン特異的な蛍光色素を用いてアクチンの溶出パターンも調べた。両酵母で2つのアクチンのピークが検出され、Dでは凍結貯蔵後に両ピークとも低下したが、DFTは低下しなかった。これより、Dではアクチンの凍結損傷が著しいものと考えられる。 解糖系の酵素については、ヘキソキナーゼおよびエラノーゼ活性は、両酵母で凍結貯蔵中に低下したが、低下の程度はDにおいて大きかった。解糖系の律速段階であるホスホフルクトキナーゼは本来の分子量(720,000)よりも高分子側にも活性のピークが検出され、他の酵素あるいは蛋白質と会合状態で存在していることが考えられる。Dでは高分子側にあった活性のピークが凍結貯蔵後には低分子側へ移動したことより、本酵素が、凍結貯蔵後には会合状態から解離したものと考えられる。グルタールアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼも本来の分子量(144,000)よりも高分子側に活性のピークが検出されたが、凍結貯蔵後の変化はなかった。ピルビン酸キナーゼ活性は、Dでは凍結貯蔵後に低下したが、DFTでは低下しなかった。 以上の結果より、凍結貯蔵および解凍によりヘキソキナーゼの細胞外への漏洩、ホスホフルクトキナーゼの解離、他の数種の酵素活性の低下が起こるために、解糖系の効率が低下し、発酵能も低下するものと推察される。特にホスホフルクトキナーゼは解糖系の中間付近に位置し、律速段階でもあるので、その解離は解糖系の効率に大きな影響を与えているものと思われる。また、DとDFTにおける凍結貯蔵後の発酵能低下の差は、解糖系の解離の程度やヘキソキナーゼ活性およびホスホフルクトキナーゼ活性の低下の程度が異なるためであると考えられる。
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