1992 Fiscal Year Annual Research Report
遣伝子操作によるリグニン・β-エーテル型結合の選択的開裂反応システムの開発
Project/Area Number |
04454088
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
片山 義博 東京農工大学, 共同研究開発センター, 助教授 (10214339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川合 伸也 東京農工大学, 農学部, 助手 (90202027)
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Keywords | リグニン分解 / β-エーテル結合 / 遣伝子機能 / β-エーテラーゼ / 塩基配列 / 酵素機能領域 / Cα-デヒドロゲナーゼ / NAD-結合部位 |
Research Abstract |
本研究は、リグニンが植物特に樹木成分として多量に生産され自然界の芳香族化合物の主要成分を構成し、しかもその分子内結合の50%以上がβ-エーテル型結合から構成されている事に着目し、微生物の保持する還元的β-エーテル開裂酵素機能を用いて、このβ-エーテル結合を切断することによりリグニンの断片化・低分子化を計り、特異性の高い而も温和な脱リグニン法或いは特異性の高い物質変換プロセスを開発することを目指した。 平成4年度は、樹木細胞壁を構成する高分子リグニンに含まれるβ-エーテル結合を選択的に、而も完全に開裂するうえで必要な複合的酵素システムを完成させるために、そのシステムを構成する各種酵素遣伝子の単離解析を進めた。既に単離に成功し、一部塩基配列の決定しているβ-エーテル結合開裂酵素遣伝子(lig E遣伝子)の全塩基配列を確定し、遣伝子の機能領域を確定するために遣伝子断片をヌクレアーゼによって処理して得られた多種類の鎖長を持つ欠損遣伝子断片を調製た。この得られた各種断片を大腸菌の発現ベクターに連結し発現させ、β-エーテラーゼ活性を評価した。その結果、843bpから構成される遣伝子断片の5'側から33bpを欠く遣伝子断片は活性な酵素を生産しなかった。また、3'側については6bpを欠くと活性酵素は生産されなかった。つまりβ-エーテラーゼ酵素タンパクの機能発現の必須領域の確定に成功した。 次に、β-エーテラーゼの基質特異性がCα側鎖がカルボニル基から構成されるβ-エーテル結合にのみ活性を示すことから、Cα側鎖が水酸基から構成されるβ-エーテル結合に対し、そのCα位をカルボニル基に変換する酵素(Cαデヒドロゲナーゼ)遣伝子を単離して、先のβ-エーテラーゼ遣伝子と共役的に発現させ、機能させることにより高分子の各種β-エーテル結合を効果的に切断する複合的酵素遣伝子の発現システムの完成を目指した。本研究の使用する微生物のCαデヒドロゲナーゼ活性は、NADH依存型の細胞質内に分布する。平成4年度の研究によって、本酵素遣伝子がβ-エーテラーゼ遣伝子の近傍に存在する事を突き止め遣伝子単離に成功した。その全塩基配列の決定に成功し、本酵素遣伝子が915bpから構成され305アミノ酸を暗号化していることを明らかにした。そのアミノ酸配列中にNADと結合するモチーフがN末端側に存在していた。次に本遣伝子の機能領域を確定するために、ヌクレアーゼ処理した各種欠損遣伝子断片を作製し、大腸菌の発現ベクターに連結し大腸菌細胞内での酵素活性を評価し、その機能領域の確定に成功した。 以上平成4年度は、高分子リグニンを構成するβ-エーテル結合を完全開裂させるうえで不可欠な2種類の酵素遣伝子の単離、全塩基配列の決定とそれらの機能領域の確定に成功した。
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