1992 Fiscal Year Annual Research Report
イヌとニワトリの系統分化、特に日本渡来の経路について
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04454109
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
田名部 雄一 麻布大学, 獣医学部, 教授 (30021679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡林 寿人 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (60130887)
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Keywords | 日本犬 / 三河犬 / 北サハリン在来犬 / 琉球犬 / ヘモクロビンA / ガングリオンドモノオキンゲナーゼg / 遺伝子頻度 / 蛋白質多型 |
Research Abstract |
1.四国徳島県で飼育されている三河犬27頭から採血し、その血液を電気泳動して、その蛋白質多型を調べた。ヘモグロビンA(Hb^A)遺伝子の頻度は、0.540と高かった。多型を示す遺伝子の頻度を主成分分析した所、三河犬は、日本犬種では最も朝鮮半島の在来犬、珍島犬、済州島犬に遺伝子構成が近いことがわかった。 2.沖縄本島北部の山原(やんばる)地方の在来犬、琉球犬(りゅうきゅういぬ)の採血調査を引続き行なった。石垣島北部にも似たイヌが見出された。この両方を合せて170頭の血液を調べた。この両群のイヌは、遺伝的に極めて近い関係にあることがわかった。またその遺伝子構成は、日本の北端にいる北海道犬(アイヌ犬)と近いことが知られた。 3.ユジノサハリンスクにあるサハリン地誌博物館の協力を得て、北サハリンのニブヒ(Nivhi)族の所有する在来犬55頭の採血調査を行った。その結果ヘモグロビンA(Hb^A)遺伝子の頻度は、0.750と著しく高く、この値は、珍島犬、済州島犬、エスキモー犬の値に近く、北海道犬(アイヌ犬)の値(0.072)とは大きく異なっていた。またガングリオシドモノオキンゲナーゼg(Gmo^g)遺伝子の頻度は、全体でも0.238とかなり高いが、はっきりした地域差が認められた。南半分のものは0.118に対し、Val以北の北半分のものは0.410と著しく高く、この値は珍島犬の0.503と近く、北海道犬の0.000と全く異なっていた。このことから、北サハリン在来犬は、シベリアから入ったもので、北海道から北上したものでないことが知られた。 4.以上のことは、イヌがヒトと共に移動することから考えて、縄文人が先ず古い型のイヌを南アジアから琉球を経て日本本土に持ち込み、北海道にまで達した。ついで弥生人が新しい型のイヌを朝鮮半島から日本本土に持ちこみ、本州では混血が起り、多くの日本犬種が成立したと思われる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tanabe,Y.: "Production,evolution and reproductive endocrinology of ducks." AJAS(Asian Australasian J.Anim.Sci.). 5. 173-181 (1992)
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[Publications] Tanabe,Y.: "Phylogenetic studies on the Japanese dogs,with emphasis on migration rontes of the dogs." Intern.Symp.on Japanese as a member of the Asian and Pacific populations Kyoto. 4. 161-173 (1992)
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[Publications] 田名部 雄一: "家畜育種の過去現在未来" 第12回基礎育種学シンポジウム報告. 26-41 (1992)
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[Publications] 田名部 雄一: "最古の家畜「犬」(1)-(12),口絵" 畜産の研究. 46. 1-12 (1992)
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[Publications] 田名部 雄一: "家畜化とそれに伴う変化(1)(2)" 畜産の研究. 47. 83-88 277-280 (1993)
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[Publications] 田名部 雄一: "アヒルの特性とその利用の方向(1)(2)" 畜産の研究. 47. 163-166 293-299 (1993)