1992 Fiscal Year Annual Research Report
神経誘導物質としてのbFGF、及びその細胞内情報伝達機構に関する研究
Project/Area Number |
04454135
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 治正 東京大学, 医学部(医), 助教授 (40134283)
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Keywords | 神経誘導 / bFGF / 情報伝達 / アフリカツメガエル / オーガナイザー |
Research Abstract |
(1)ミクロ培養系を用いてbFGFがニューロンを誘導分化させる時の有効濃度を定量的に決定した。具体的には初期嚢胚から10-20の未分化外胚葉片を切り出し、Ca、Mg欠如溶液中で細胞を解離させた後、一定数(150)をとってミクロ培養ウエルに分注する。これに種々の濃度のbFGF(1-500pM)を加えて培養した後、分化した神経管由来のニューロンを我々が作製した特異的単クローン抗体N1を用いた蛍光抗体染色法により検出した。その結果bFGFの有効濃度は5-10pMと極めて低く、すでに報告のあるFGF受容体に対する解離定数のorderに一致することから生理的に意味のある範囲内にあるということができる。 (2)bFGFの外胚葉細胞に対する誘導作用は外胚葉細胞を調製した嚢胚の発生段階により質的に異なることが新たに明らかとなった。即ちより初期の嚢胚に由来する外胚葉細胞に対しては強力なニューロン誘導活性を示し色素細胞誘導活性は殆どなかったのに対し、より後期の嚢胚に由来する外胚葉細胞に対しては強力な色素細胞誘導活性のみを示した。また興味深いことに色素細胞誘導におけるbFGFの有効濃度はこれを与える外胚葉細胞の発生段階により異なることも明らかとなった。即ち、最初10pM前後であったものが外胚葉細胞の加齢に伴ってより高濃度(500pM前後)のbFGFが必要となった。 正常発生において背方中胚葉の中央部を占める細胞が外胚葉細胞に接触するtimingは周縁の中胚葉細胞が外胚葉細胞に接触するtimingより早いことが知られている。従って、我々の得た結果は正常発生においてもbFGFが神経管、神経冠両系統の誘導に大きな役割を果たしていることを示唆するものと考えられる。今後はこの点もさらに実験的に確証してゆきたい。
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