1993 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類平滑筋組織における蛋白質脱燐酸化過程の調節的役割の解明
Project/Area Number |
04454136
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高井 章 名古屋大学, 医学部, 助教授 (50126869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳納 博幸 名古屋大学, 医学部, 助手 (60155520)
富田 忠雄 名古屋大学, 医学部, 教授 (50078763)
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Keywords | 平滑筋 / プロテインホスファターゼ / オカダ酸 / 酵素阻害剤 / 蛋白質燐酸化 / 筋収縮 / 好中球 / 細胞運動 |
Research Abstract |
(1)好中球の遊走能、食作用などに関して重要な、細胞内アクチンの重合-解離には、アクチンの可逆的燐酸化が調節的役割を果していることが認識されるようになった。われわれは、ヒト好中球においてアクチン重合を引き起す各種物質の効果が、プロテインフォスファターゼ阻害剤オカダ酸によりどのように修飾されるかを検討した。その結果、オカダ酸は、ホルボールエステル、血小板活性化因子(PAF)、Leukotoriene B4の投与によるアクチンの重合とそれに伴う細胞の形態変化は完全に起らなくするが、走化性ペプチドfMLPや抗体と結合したチモザンによる反応は有意な変化を示さないことが判明した。これらの知見は、各種の刺激による好中球の活性化の過程に、燐酸化の関与する複数の経路の存在することを強く示唆するものである。 (2)十数種類のOA誘導体を用い、オカダ酸のプロテインフォスファターゼ抑制に関する構造-活性相関を定量的に検討した。その結果、オカダ酸分子内の特定の官能基が修飾ないし除去されると、酵素阻害作用が著しく減弱ないし消失することがわかった。誘導体のなかでも、2-oxo体などは、比較的多くの試料を得ることができるので、それらをnegative controlとして用いれば、あるオカダ酸の効果が、プロテインフォスファターゼ抑制によるものか、何らかの非特異性の効果によるものであるかを判定することができる。これは、応用上、きわめて有用であると思われる。また、今回の実験のために用意した各種のオカダ酸誘導体のうち、27-デヒドロ体では、オカダ酸に比べ、1型および2A型プロテインフォスファターゼに対する解離定数が、それぞれ40倍と230倍大きくなるのが観察された。この親和性の低下は、10ないし20kJ/molの結合エネルギーの減少に当るが、その大きさは、ちょうど水素結合1個分の結合エネルギーに近いことに興味がもたれる。つまり、酵素阻害に当り、オカダ酸の27位の水酸基が、酵素蛋白のどこか供電子的な部位と結合する部位として働く可能性がある。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Takai,A.et al.: "Estimation of the rate constants associated with the inhibitory effect of okadaic acid on type 2A protein phosphatase by time-course analysis" Biochemical Journal. 287. 101-106 (1992)
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[Publications] Takai,A.et al.: "Inhibitory effect of okadaic acid derivatives on protein phosphatases:a study on structure-affinity relationship" Biochemical Journal. 284. 539-544 (1992)
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[Publications] Lu,D.J.et al.: "Modulation of neutrophil activation by okadaic acid,a protein phosphatase inhibitor" American Journal of Physiology. 262. C39-C49 (1992)
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[Publications] Downey,G.P.et al.: "Phorbol ester-induced actin assembly in neutrophils:role of protein kinase C" Journal of Cell Biology. 116. 695-706 (1992)
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[Publications] Downey,G.P.et al.: "Okadaic acid-induced actin assembly in neutrophil:role of protein phosphatases" Journal of Cellular Physiology. 155. 505-519 (1993)
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[Publications] Sasaki,K.et al.: "Affinity of okadaic acid to type 1 and type 2A protein phosphatases is markedly reduced by oxidation of its 27-hydroxyl group" Biochemical Journal. 298. 259-262 (1994)
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[Publications] 高井 章: "オカダ酸の化学構造とその蛋白質脱リン酸化酵素阻害作用" 細胞. 24. 367-371 (1992)
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[Publications] 高井 章: "蛋白質脱リン酸化反応の解析法" 実験医学. 10. 1297-1304 (1992)