Research Abstract |
免疫担当細胞の情報伝達におけるプロテインホスフアターゼの役割を明らかにする目的で,免疫担当臓器および細胞の粗抽出液でのセリン/スレオニン残基特異的プロテインホスフアターゼの分子種PP1,PP2A,PP2B(カルシニューリン),PP2Cの分別定量法を確立し,これを用いと自己免疫疾患モデルマウス(1prマウス)における活性を測定し,病態変異を解析した。さらにチロシン残基特異的プロテインホスフアターゼ(チロシンホスフアターゼ)の測定も行った。その結果以下の知見を得た。PP1活性では,T細胞はB細胞より明らかに高値を示し,1prではT,Bいずれにおいても著変を認めなかった。したがって,組織レベルの1prにおけるPP1活性の上昇は,B細胞より高値を示す1prの異常T細胞の集積によると結論された。PP2A活性では,T,B両細胞とも正常では同程度の活性を有していたが,1prでは,B細胞ではほとんど活性の変化を認めなかったが,T細胞では1prで明かな活性上昇を認めた。したがって,組織レベルでの,1prにおけるPP2A活性の明かな上昇は,1prで集積する異常T細胞の高いPP2A活性によることが結論された。PP2Bでは,1prの脾で1,5倍の上昇が認められたが,細胞レベルでみると,B細胞で著変はなく,T細胞で特異的な上昇が認められた。チロシンホスフアターゼ活性については,至適条件の検索が終り,現在組織レベルで活性測定を行っているが,CD45が局在する膜画分の活性よりも,可溶画分での活性の上昇が顕著のように思われる。また1prの肝で著明なPTP活性の上昇を認めた。以上より,本酵素の活性の1prでの変異について,組織レベルでの変化を細胞レベルで捉えることに成功した。これらの免疫担当細胞における本酵素の病態変異の意義について,とくに細胞内伝達情報機構の立場から解析を進めている。
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