1994 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト肝細胞癌の発癌機序:病理組織像と細胞動態、細胞形質像、遺伝子的性状との対比
Project/Area Number |
04454179
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Research Institution | KANAZAWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
寺田 忠史 金沢大学, 医学部, 助教授 (30188677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 素子 金沢大学, 医学部, 助手 (70225895)
細 正博 金沢大学, 医学部, 助手 (20219182)
斉藤 勝彦 金沢大学, 医学部, 講師 (10205635)
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Keywords | 肝発癌 / p53 / ras / サイトケラチン |
Research Abstract |
癌遺伝子、癌抑制遺伝子の解析:時間がなく、遺伝子の検察はあまりできなかったが、ras癌遺伝子産物とp53癌抑制遺伝子産物を免疫組織化学的に検討した。p53はAHでは全く発現がなく、肝細胞癌に2%位に発現がみられた。従って、他の臓器の発癌と同様に、肝発癌でもp53の関与は、発癌後期に関与すると考えられた(未発表データ)。ras遺伝子産物は、典型型AHと癌内包型AHの一部の症例で弱く発現されており、肝細胞癌で中等度に発現されていた(未発表データ)。以上、rasの発現は、肝発癌の初期におこると思われた。 AHのヌードマウスへの移植:最近外科切除AHがなく、実験できなかった。 臨床追跡調査:外科的にAHを切除された肝硬変患者24(通常型AH、10名;異型型AH11名、癌内包型AH3名)の追跡調査を行った(平均追跡期間26年)。その結果、癌内包型AH患者のすべてと異型型AH4名に肝細胞癌が発生した。これらの患者の肝細胞がんの発生部は、AH発生部とは異なっていた。通常型AH患者では、肝細胞癌の発生は全くなかった。これらより、通常型AHは、前癌状態ではないと思われた。しかし、異型型AHと癌内包型AHの患者は高頻度に肝細胞癌を合併し、厳重な臨床的追跡が必要であると思われた。また、異型型AH、癌内包型AH、肝細胞癌の発生部がことなり、肝細胞癌の他中心性発生が示唆された。 サイトケラチン19の発現:肝では胆管に特異的に発現するサイトケラチン19(CK19)をAE1抗体を用いて、免疫組織化学的に検討した。管実質内のCK19陽性細胞は、実質内に存在する1型細胞(実質内細胆管)と実質辺縁部に存在する2型細胞(細胆管反応)に分類できた。正常肝、慢性肝炎、肝硬変、通常型AHでは、両者のCK19陽性細胞が均一に分布していた。異型型AHでは、これらのCK19陽性細胞の分布は不均一で、特徴的に、小葉間胆管が小数見られた。この小葉間胆管は異型型AHの増殖・進展の過程で、AH内部に取り込まれたものと思われ、異型型AHの増殖に特徴的であった。癌内包型AHでは、異型型AHと同様に、CK19陽性細胞の分布は不均一で、内部の肝細胞癌巣ではCK19陽性細胞は見られなかった。細小肝細胞癌では、CK19陽性の1型細胞と2型細胞は共に存在しなかったが、一部の症例で、癌細胞が陽性であった。以上、CK19陽性の1型細胞と2型細胞の分布より、通常AHは単なる大型再生結節であると思われた。また、異型型AHと癌内包型AHは肝発癌の初期の段階であることと矛盾しなく、異型型AH→癌内包型AH→細小肝細胞癌という過程において、CK19陽性細胞の分布と密度が変化することが示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Kaji K.Terada T.etal.: "Frejuent occuyrerce of hepatocellularcarcinoma in cirshoticlivers afler surgicalresection of atypjcal adenomatous heperplasia(Borderline Hepatocellular Pecicn):Afollow up study" American Journal of Gastroenterology. 89. 903-908 (1994)
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[Publications] Terada T.et al: "Distribution of cytokeratin 19-pcsitive biliary cells in cirrhctcnodules.hepatic bcrdorline nodules (atypical adenonatoushyperplasia)and smoll hepatocellular carcinoma" Modern Pathology. (in press). (1995)