1992 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴法による脳のエネルギー代謝機能評価法の研究-メチル水銀中毒脳を例として-
Project/Area Number |
04454219
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
三森 文行 国立環境研究所, 環境健康部, 主任研究員 (90125229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 篤浩 国立水俣病研究センター, 疫学研究部, 室長 (20041329)
鈴木 明 国立環境研究所, 環境健康部, 主任研究員 (20124349)
鈴木 継美 国立環境研究所, 副所長 (80009894)
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Keywords | NMR / メチル水銀 / 脳 / エネルギー代謝 / ATP / クレアチンリン酸 |
Research Abstract |
ラットに経口的に5mg Hg/kg体重の塩化メチル水銀を12日間連続投与することにより、メチル水銀中毒ラットを作成することができた。中毒ラット脳における総水銀濃度は195+21μmol/kg wet weight(n=5)と正常ラットでの測定値0.039+0.004μmol/kg wet weightに比べ、極めて多量の水銀が蓄積されていた。このラットを生かした状態で、脳のプロトンMRI及び^<31>P NMRスペクトルの測定をおこなった。プロトン画像ではメチル水銀中毒ラット脳と正常ラット脳を区別することはできなかった。^<31>P NMRについては測定法の検討をおこない、頭皮や頭蓋周辺の筋肉を外科的処置により取り除くことにより、脳からの信号を選択的に検出する方法を確立した。これにより、^<31>P NMRスペクトルから脳内に存在するATP、クレアチンリン酸(PCr)、無機リン(Pi)、ホスホモノエステル(PME)、ホスホジエステル(PDE)などのリン酸基を有する代謝物の存在量を解析することができるようになった。この結果、メチル水銀中毒脳においてはATPは変化していないが、高エネルギーリン酸化合物であるPCrが正常脳と比べて有意に低下(p<0.01)していることが明らかになった。脳内ATP濃度を3μmol/g wet weightとすると、中毒脳、正常脳におけるPCr濃度はそれぞれ4.55+0.34、5.45+0.33μmol/g wet weight(n=5)となり、中毒脳でのPCrの低下は17%となる。無機リン共鳴線の化学シフト値より求めた脳組織pHは中毒脳、正常脳ともに7.1と差は認められなかった。この結果は中毒脳における酸化的リン酸化機能の低下を示唆しており、次のステップとしてin vivo脳におけるATPの代謝回転速度を実測することにより、メチル水銀が脳のエネルギー代謝系に及ぼす毒性発現機構をより詳細に解明できるものと期待できる。
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