1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04454229
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大島 徹 金沢大学, 医学部, 助教授 (40183024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高安 達典 金沢大学, 医学部, 助手 (80154912)
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Keywords | 法医病理学 / 損傷 / 微視的観察 / 鈍器損傷 / 鈍器損傷 / 生活反応 / 皮膚構造と皮野 / 皮溝と皮丘 |
Research Abstract |
法医学における損傷分類はヒト皮膚の解剖学的正常構造の外力による断裂ないし消失の特徴的所見に基づいている。本研究では、特に正常表皮を構成している“皮丘"と“皮溝"の形態学的変化を徴視的に観察し、表皮の真皮からの剥脱状態やその方向、あるいは真皮乳頭層の露呈の状況や出血の程度などを詳細に記録する方法論の確立に主眼を置いている。 材料と方法:剖検例を中心に各損傷について、眼科手術用顕微鏡(タカギセイコー社、OM-30U、総合倍率4.6〜27.4倍)で観察し、写真撮影した。また必要に応じて損傷皮膚を採取し,可及的に原形を保つよう固定後(10%ホルマリン20%,エタノール25%,グリセリン20%と蒸留水35%の容積比の混合液で固定),再び観察した。 観察結果:(1)表皮剥脱-表皮の皮丘や皮溝における正常配列の乱れや表皮の真皮からの剥離を、その方向と共に明暸に観察し得た。特に肉眼視が困難な、軽微な表皮剥脱の観察に優れていた。 (2)皮下出血-表皮を通して真皮乳頭以下における血液の拡がりや程度を観察しうる上、変色部に相当する表皮皮丘や皮溝の構造変化を同時に捉えることが出来るため、成傷器の作用機序の検討に有用であった。 (3)刺(切)創-微視的観察では刃側と刃背側が形成する損傷を明暸に区別し得た。即ち、刃の薄い有刃器が形成する刺創であっても、刃背側では創縁にわずかながなら微細な表皮剥脱が見られることが多かった。 (4)挫裂創-創縁は不整で表皮剥脱も明暸に認められた。また、創洞内の組織の架橋形成も観察され、鈍体が直接に皮膚に作用した事を示した。 (5)索溝-索溝内には部分的表皮剥脱がみられ、皮野の平担化や、皮丘が高く皮溝が深くなるなど、健常部表皮と明らかに異なっていた。 以上、眼科手術用顕微鏡を用いた微視的系統的損傷検査は、これまでの肉眼的観察では不可能であった精緻な観察を可能にすることを示した。
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Research Products
(2 results)