1993 Fiscal Year Annual Research Report
消化管における肝型および腸型脂肪酸結合蛋白(FABP)の分布と動態からみた存在意義に関する研究
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04454328
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
畠山 勝義 新潟大学, 医学部, 教授 (90134923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 博史 新潟大学, 医学部・附属病院, 医員
酒井 靖夫 新潟大学, 医学部・附属病院, 助手 (60251823)
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Keywords | 脂肪酸結合蛋白 / fatty acid binding protein / 肝型と腸型FABP / 腸管内分布 / 脂肪吸収 / 脂肪負荷による変動 / 大腸癌とFABP |
Research Abstract |
1.小腸に存在する2種のFABP(肝型、腸型)の動態 ラット正常腸管における肝型および腸型FABPの分布を検討した結果、両者ともに小腸では空腸に最も多く、回腸にはこれと同等かやや少なく、次いで十二指腸の順で、分布状況は同じであったことより、今年度は両者がどの様に脂肪吸収に関与しているのかの差異をみるために、脂肪含量の異なる食事負荷により検討した。 1)高脂肪食負荷により肝型では空腸で有意にFABPの増加がみられ、脂肪負荷で肝型が誘導されることがわかった。一方、回腸や十二指腸では著明な増加は観察されなかった。腸型では空腸、回腸とも増加したが、回腸において著明であり、後者は前者に比し有意の増加を示した点で肝型とは異なった動態を示した。 2)低脂肪食負荷に対しては肝型、腸型とも通常食に比し有意差を認めなかった。 2.ラット大腸におけるFABPの分布 肝型は大腸でもかなりの量存在したが、腸型はほとんど存在せず、小腸とは対照的であった。生理的な脂肪の吸収は小腸で行われることから、大腸における肝型FABPの存在は消化吸収以外の機能を予測させ興味深いところである。そこでFABPとアゾ発癌色素との高い親和性から、ヒト肝型FABP抗体を用いてヒト大腸癌とFABPとの関連について検討した。 ヒト大腸癌組織切片を用いてPAP法によりFABP染色を行い、臨床病理学的因子との関連を検討した。また、癌の悪性度と関連を示すとされるDNA ploidy patternについても同一症例で検討した。 1)大腸癌組織におけるFABPは高分化型腺癌で、低分化型に比し、強く染色される度合が多く、リンパ節転移陰性例や進行度(stage)の軽い症例で高染色例が多かった。 2)染色程度と5年生存率との関係をみると、高染色群で低染色群に比し有意に生存率が良好であった。 3)DNA ploidy patternとの関連ではdiploid群はaneuploid群に比しFABP高染色群が多く、両者に関連がみられた。
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[Publications] 村上博史,酒井靖夫ほか: "飼料中の脂肪含有量の差異に対するラット腸管L-FABP濃度の変動" 消化と吸収(日本消化吸収学会雑誌). 15(2). 128-131 (1992)
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[Publications] 太田一寿: "進行大腸癌における脂肪酸結合蛋白の免疫組織学的検討" 新潟医学会雑誌. 106(4). 310-321 (1992)
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[Publications] 村上博史,酒井靖夫ほか: "ラット腸管のI-FABP濃度と、脂肪含有量の異なる食餌摂取に対するI-FABP濃度の変動" 消化と吸収(日本消化吸収学会雑誌). 16(2). 61-65 (1993)