Research Abstract |
悪性グリオーマ患者リンパ球のT細胞レセプター(TCR)に関する研究目的でTCR Vβ領域に対するプライマーを用いてPCRを行い,TCR Vβファミリーのclonalityの変化を初回治療時と再発時とで比較検討した結果,未梢血リンパ球においては,ほぼ一様に検出可能であり治療に伴う明らかな変動も認めず,病変局所のリンパ球においても,一般に,そのシグナルは弱いものの,末梢血リンパ球におけるとほぼ同様のパターンを示し,TCR Vβファミリーの特定の偏りは認めなかった。但し,LAK療法を施行後,自己腫瘍細胞に対する細胞障害活性の増強を認めた症例において,治療後のVβ7のシグナル増強を認め,特定のクローンがpositive selectionを受けているものと考えられた。更に,LAK療法施行後に再発をきたしたグリオーマ組織内に浸潤したリンパ球のTCR Vβファミリーの偏りも一部の症例で認め,そのようなリンパ球の自己腫瘍細胞に対する細胞障害活性の増強を認め,抗腫瘍活性を持つエフェクター細胞活性化の機序を考える上で重要なものと思われた。一方,グリオーマ細胞のサイトカイン産生能と接着分子の発現性についての解析では,8種のグリオーマ細胞株でIL-6,IL-8の産生を認め,IL-1β刺激で約100倍に,放射線照射で約3〜10倍に増強された。又,全例IL-6,IL-8の恒常的な遺伝子発現が認められ,IL-1β刺激,放射線照射で発現が亢進した。組織ではIL-6とIL-8は4例に,IL-6receptorは全例に遺伝子発現を認めた。NCAM,ICAM-1は3種の細胞株で発現を認め,IFNγ刺激と放射線照射により2例に新たな発現を認め,組織ではNCAMは11例,ICAMは6例に陽性であり,ICAM-1の発現と浸潤リンパ球数との間には相関関係を認め,グリオーマ細胞と免疫担当細胞との間に何らかの相互作用があるものと考えられた。
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