1992 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞死及びてんかんにおける興奮性アミノ酸、エンドセリン及び神経成長因子の関与
Project/Area Number |
04454365
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
茂野 卓 埼玉医科大学, 医学部, 助教授 (20170863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠崎 温彦 東京都臨床医学総合研究所, 薬理研究室, 部長 (20109945)
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Keywords | 神経細胞死 / グルタミン酸 / 神経成長因子 / エンドセリン / 脳虚血 / 海馬 |
Research Abstract |
海馬CAl錘体細胞の遅発性神経細胞壊死の発生機構に迫るべく、グルタミン酸受容体を中心とした分子レベルでの情報を、海馬興奮性神経回路網の理解に結び付けることを試みた。ラットを用いた主な実験結果は次の通りである。(1)グルタミン酸NMDA受容体アゴニストL-CCG-IV,50nmole/μlの脳組織内注入は選択的CAl細胞死を起こした。(2)一側CAlに注入したにもかかわらず、CAl細胞死は両側性に見られた。(3)脳梁および背側海馬交連をあらかじめ切断した後には、細胞死は両側性に抑制された。(4)海馬脳波はL-CCG-IV注入数分後、注入側CAlで棘波が見られ、その後対側CAlに棘波が伝搬した。ラットは間欠的に前肢の間代性痙攣およびWet-Dog Shakingを示した。(5)脳梁および背側海馬交連切断後は棘波の形成は見られず、痙攣も無かった。(6)NMDAを用いて同様の検索を行った。10nmole/μlのCAl注入で痙攣が生じるが、非致死的であった。30nmole以上は致死的であった。(7)グルタミン酸代謝調節型受容体アゴニストであるL-CCG-Iはキンドリングてんかんを抑制した。これらの結果から選択的CAl細胞死の理解には、興奮性アミノ酸による局所細胞の分子レベルの応答のみならず、海馬そしておそらくは大脳皮質を含めた興奮性神経回路のかかわりが重要である。また分子レベルではNMDA型と代謝調節型グルタミン酸受容体の拮抗する役割が推察された。一方海馬ではグルタミン酸受容体刺激後、NGFあるいはBDNFの遺伝子発現がみられる。我々は既にNGFが遅発性神経細胞死を抑制することをみているが、現在このモデルでNGFおよび我々が最近その生成に成功したBDNFの作用を検討している。エンドセリンB受容体の発現は脳梗塞モデルでその辺縁部の他に遠隔部である黒質でも見られ、これがグリアの反応であることが明らかになった。このグリアはエンドセリン刺激によりNGF分泌をすることが最近報告され、我々は現在このモデルにおけるエンドセリンの発現をみている。
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[Publications] Hashimoto,Y 他: "Significance of nerve growth factor content levels after transient forebrain ischemia in gerbils." Neuroscience Letters. 139. 45-46 (1992)
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[Publications] 茂野: "神経移植とNGF" Clinical Neuroscience. 10. 1025-1027 (1992)
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[Publications] 茂野: "脳障害の修復と栄養因子" Dementia. 6. 276-282 (1992)
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[Publications] Shigeno 他: "Transneural mechanism of selective death of CAl neurons by an NMDA receptor antagonist,L-CCG-IV." Society for Neuroscience(Abstracts). 1361- (1992)
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[Publications] 茂野: "「脳の時代」をどう切り開くか? 分子とシステムの統合した理解を求めて" 治療学. 27. 250- (1993)