1993 Fiscal Year Annual Research Report
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04454445
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
酒井 敏行 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (20186993)
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Keywords | 網膜芽細胞腫 / 網膜芽細胞腫遺伝子 / RB遺伝子 / 家系分析 / プロモーター / 分子生物学 / メチル化 / 癌体質診断 |
Research Abstract |
網膜芽細胞腫の診断及び体質診断に、癌抑制遺伝子であるRB遺伝子のプロモーター領域の異常を検出することが有用であることを報告してきたが、本年度は更にRB遺伝子のプロモーター構造を解析した結果、サイレンサー部位を見出すことができた。私達が以前報告したように、RBF-1と名付けられた転写因子の結合する部位とそれに隣接するATF結合塩基配列に点突然変異が存在すると癌体質になることが知られている。今回、そのATF部位の下流に隣接しているE2F部位の作用を検討した。その結果、このE2F部位に点突然変異を入れ、E2Fタンパクが結合できなくなると、全体のRB遺伝子プロモーター活性が2-5倍に上昇することが明らかとなった。これはこのE2F部位が興味深いことにサイレンサーとして機能していることを示している。この部位に点突然変異が存在する家系が存在した場合、逆に癌に罹患しにくい家系になる可能性も考えられるが、それは今後の研究を持たなくてはならない(Oncogene,in the press)。更に、癌抑制遺伝子のp53がRB遺伝子プロモーターをp53結合部位を介して活性化することを見出した(J.Biol.Chem.,in the perss)。またRB遺伝子産物自身がRB遺伝子プロモーターを活性化することを見出した(投稿準備中)。 更に実際の日本の網膜芽細胞腫由来DNAを用いてRB遺伝子プロモーター領域の異常を検討した結果、一例の散発性の網膜芽細胞腫由来のDNAにRBプロモーター領域の過剰メチル化が見られた。更に予想通り、この患者の白血球DNAにはこの異常が見られなかった。しかも興味深いことに、私達が米国で報告した同様の過剰メチル化が見られた5例においては、プロモーターからイントロン1まで広汎な過剰メチル化が見られたのに対し、この日本の症例では、過剰メチル化がプロモーター領域に限局していた点が興味深い。これは私達がRB遺伝子プロモーター領域の過剰メチル化により失活して発癌を起こすという仮説に合致する。これらのデータより、理解の遅れていたRB遺伝子プロモーターの構造が明らかになりかつ網膜芽細胞腫の家系分析にこれが有用であることが示された。
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[Publications] Osifchin,N.,et al.: "Identification of a p53 binding site in the human retinoblastoma susceptibility gene promoter" J.Biol.Chem.(in the press).
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[Publications] Ohtani-Fujita,N. et al.: "A silencer element in the retinoblastoma tumor-suppressor gene" Oncogene. (in the press).
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[Publications] Yamamoto,M. et al.: "Effect of tumor suppressors on cell cycle regulatory genes:RB suppresses p34^<cdc2>, expression and normal p53 suppresses cyclin A expression" Exp.Cell Res.210. 94-101 (1994)
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[Publications] Ohtani-Fujita,N.et al.: "CpG methylation inactivates the promoter activity of the human retinoblastoma tumor-suppressor gene" Oncogene. 8. 1063-1067 (1993)