1994 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病性慢性合併症の発症とヒトアルドース還元酵素の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
04454552
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山下 亀次郎 筑波大学, 臨床医学系, 教授 (80015982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小海 康夫 国立小児病院, 小児医療研究センター, 室長
松島 照彦 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (60199792)
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Keywords | アルドース還元酵素 / ソルビトール / ミオイノシトール / イコサペント酸 / Na^+,K^+-ATPase / 糖尿病性合併症 / 高血糖 / 高浸透圧 |
Research Abstract |
糖尿病性慢性合併症の発症において,高血糖および細胞内ソルビトールの蓄積によりミオイノシトール代謝障害が引き起こされることを明らかにしてきたが,本研究において培養ヒト大動脈平滑筋細胞を用いて検討した。その結果,ミオイノシトールのとり込みは高血糖あるいは高浸透圧により有意に減少した。一方,イコサペント酸の添加によりミオイノシトールのとり込みは対照群のレベルまで回復した。また,ミオイノシトール代謝はNa^+,K^+-ATPaseに依存していることが示された。従って,細胞内ソルビトールの増加は浸透圧の上昇とともに間接的にはミオイノシトール代謝異常を引き起こすことが示され,糖尿病性合併症の発症に関与することが示唆された。 糖尿病性網膜症の発症に網膜血管新生因子の関与が考えられる。本研究で網膜血管新生動脈モデルを用い,TGF-β,IGF-1,PDGF-b,bFGF,VEGFの各遺伝子発現を網膜組織で経時的に検討し,各因子の血管新生に関与する時期を明らかにした。即ち,新生仔ラットを高酸素下で飼育すると短期間で網膜新生血管が形成された。経時的に麻酔下で網膜組織を採取し,抽出RNAより各遺伝子発現を検討した。その結果,TGF-β遺伝子の発現減少,IGF-1,PDGF-b,bFGF,VEGF遺伝子の発現は他の遺伝子の変化,組織変化に先行して増加したことから,血管新生の初期に強く関与していることが示唆された。 以上の研究から,糖尿病性慢性合併症にみられる組織ソルビトールの蓄積は組織内ミオイノシトールの低下を引き起こすこと,網膜病変に各種成長因子の関与が示され,これらの代謝異常と遺伝子異常の関与が強く示唆された。
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[Publications] Yukichi Okuda: "Eicosapentaenoic acid enhances myo-inositol uptakein cultured human aortic smooth muscle cells" Life Sciences. 55. 1-4 (1994)
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[Publications] 山岡 孝: "ヒトアルドース還元酵素CDNAを導入したトランスジェニックマウスの解析" 糖尿病. 37(Suppl.1). 387 (1994)
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[Publications] Yasushi Kawakami: "Gene therapy for diabetes with regulated proinsulin broduction by gluccoorticoid" Cancer Research. (印刷中). (1995)