1992 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺細胞におけるATP、アデノシンとTSHの共同作用分子機構と生理・病理的意義
Project/Area Number |
04454553
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
近藤 洋一 群馬大学, 内分泌研究所物理化学部門, 教授 (70008598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正 公枝 群馬大学, 内分泌研究所物理化学部門, 教務員 (40201561)
戸村 秀明 群馬大学, 内分泌研究所物理化学部門, 助手 (70217553)
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Keywords | 甲状腺胞細 / アデノシン / TSH / カルシウムイオン / アラキドン酸 / フラ2 / ホスホリパーゼA2 |
Research Abstract |
甲状腺細胞は各種の外来性シグナルによって制御されている。従来は個別のシグナルに対する細胞のレスポンスが研究の対象であったが、生体内では多くの場合複数のシグナルの影響を受けていると思われる。本研究では、最近の我々の知見に基づき、アデノシンやATPとTSHとの共同作用の解析を目的とした。本年度の成果は以下の通りである。 1)画像解析:FRTL-5甲状腺細胞にあらかじめCa^<2+>感受性蛍光色素fura2を取り込ませ、TSHとアデノシンを添加した時の細胞の蛍光変化を追跡した。 1.Ca^<2+>濃度の変化は細胞の内部で起こる。 2.アデノシンではCa^<2+>変化は起こらないが、TSHで刺激後アデノシンを加えるとTSH依存性のCa^<2+>変化のあった細胞でさらにCa^<2+>の上昇が観察され、アデノシンとTSHの共同作用が一個の細胞の中で起こることが確かめられた。 2)新しいアデノシンの作用点の発見:FRTL-5ではATPやTSHなどによるCa^<2+>動員作用に伴い、アラキドン酸が遊離する。アデノシンをこれらのシグナル分子と共存させるとCa^<2+>動員作用と同時にアラキドン酸の遊離作用も増強される。このアデノシン作用の少なくとも一部はCa^<2+>濃度の上昇によるホスホリパーゼA2の活性増強による。しかし、TSHなどと無関係に、Caイオノホアや細胞内Ca^<2+>の再固定抑制剤による遊離Ca^<2+>の増大によるホスホリパーゼA2の活性化、したがってアラキドン酸の遊離もアデノシンの添加により著しく増大する。このことはアデノシンとTSHの同時添加によって、TSHのCa^<2+>動員作用が増強されるだけでなく、ホスホリパーゼA2のCa^<2+>に対する感受性の増加も起こり、2つの作用点を介してアデノシンは甲状腺細胞の代謝制御系をモジュレートできることが明らかとなった。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Sato,K.: "Extracellular ATP stimulates three different receptor signal transduction systems in FRTL-5 thyroid cells." Biochem.J.283. 281-287 (1992)
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[Publications] Okajima,F.: "Synergism in cytosolic Ca^<2+> mobilization between bradykinin and agonists for pertussis toxin-sensitive G-protein-coupled receptors in NG 108-15 cells." FEBS Lett.301. 223-226 (1992)
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[Publications] Tomura,H.: "Discrimination between two types of P_2 purinoceptors by suramin in rat hepatocytes." E.J.Pharmacol.226. 363-365 (1992)
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[Publications] M.A.Majid: "Characterization of ATR receptor which mediates norepinephrine release in PC12 cells." Biochimica et Biophsica Acta.1136. 283-289 (1992)
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[Publications] Tomura,H.: "Enkephalin induces Ca^<2+> mobilization in single cells of bradykinin-sensitized differentiated neuroblastoma hybridoma (NG108-15)Cells." Neurosci.Lett.148. 93-96 (1992)
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[Publications] Tada,S.: "P_2 purinoceptor-mediated cyclic AMP accumulation in bovine vascular smooth muscle cells." E.J.Pharmacol.227. 25-31 (1992)
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[Publications] 近藤 洋一: "新生化学実験講座 9,ホルモンII非ペプチドホルモン" 東京化学同人, 6 (1992)
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[Publications] 近藤 洋一: "新生化学実験講座 9,ホルモンII非ペプチドホルモン" 東京化学同人, 8 (1992)