1994 Fiscal Year Annual Research Report
ピルビン酸脱水素酵素複合体における超分子組織の構築原理とその反応機構
Project/Area Number |
04454581
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹中 章郎 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (80016146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 治 京都大学, 薬学部, 助教授 (10231599)
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Keywords | ビルビン酸脱水素酵素複合体 / リポアミド脱水素酵素 / X線解析 |
Research Abstract |
クエン酸回路にアセチル基を導入するピルビン酸脱水素酵素複合体は、多数のタンパク質が組織的に会合した超分子複合体の典型的な例である。本酵素複合体は生物種によって形態が異なり、前核生物では432対称を、真核生物では532対称をもつ。そして、いずれの複合体も3種類の酵素、ピルビン酸脱水素酵素(E1)、アセチル基転移酵素(E2)、リポアミド脱水素酵素(E3)から構成される。このような組み合わせは、2-オキソグルタル酸脱水素酵素複合体や分岐鎖オキソ酸脱水素酵素複合体でも見られる。これらを通じて、E3は全く同一に酵素が利用されているという事実が最近明らかになった。したがって超分子の複合体形成におけるE3の役割に興味がもたれ、本年度はこのE3のX線解析に重点を置いた。イ-スト菌より単離精製したリポアミド脱水素酵素は結晶化のわずかな条件の違いにより結晶形が異なる。今回得られた別の結晶形について、X線解析を行った。つくばの高エネルギー物理学研究所の放射光を用いて測定したデータを用いて、グルタチオン還元酵素を参照分子とする分子置換法で初期位相を求め、剛体分子モデルによる位置と方位の精密化した。二量体のサブユニット間に存在する2回回転対称を利用した電子密度の平均化と溶媒領域の平滑化によって電子密度マップを改善する方法と、コンピューターグラフィックスによる分子モデルの構築とその原子座標を最小二乗法で精密化する方法の2つを交互に繰り返した。この構造をグルタチオン還元酵素と比較すると、4個のドメインそれぞれがシフトしているが、特にC末ドメインが大きくずれていること、しかし、FADの結合部位はほとんど同じで、さらにドメイン間に存在し反応に関与するアミノ酸の立体配置は同じであることが判明した.432対称の複合体を造る前核生物由来の本酵素と比較することにより、立体構造の高い類似性は本酵素が共通の機能という制約によって生物種を問わず保存されて来た可能性が、本研究から明らかになった。
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[Publications] T.Toyoda,et al.: "X-Ray Analysis of Yeast Lipoamide Dehydrogenase at 2.5ÅResolution" J.Biochemistry. (発表予定). (1995)
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[Publications] K.Koike,et al.: "Eukaryotic Lipoamide Dehydrogenase,Molecular Genetics and Structural Asperts" Flavins and Flavoproteins 1993. 507-517 (1994)
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[Publications] T.Toyoda,et al.: "X-ray Crystallographic Analysis of Yeast Lipoamide Dehydrogenase" Photon Factory Activity Report. 12. (1994)
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[Publications] A.Takenaka,et al.: "X-Ray Crystallographic Analysis of Lipoamode Dehydrogenase" The U.S-Japan Bilateral Seminar,Mitochondrial α-Keto Acid Dehydrogenase Conlexes. 11- (1994)
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[Publications] 竹中章郎,他: "タンパク質の構造入門" 教育社, 285 (1992)
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[Publications] 竹中章郎,他: "高分子分析ハンドブック" 日本高分子学会編,紀伊国屋書店, 1781 (1995)