1993 Fiscal Year Annual Research Report
突然変異株と試験管内機能発現によるダイニン内腕・外腕重鎖機能の追求
Project/Area Number |
04454608
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神谷 律 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10124314)
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Keywords | 鞭毛運動 / ダイニン / 突然変異株 |
Research Abstract |
真核生物の鞭毛が規則正しい波動運動を生じる機構は謎である.これまでの研究により、ダイニンの機能の理解がこの問題の解明に重要であると考えられる.鞭毛ダイニンには内腕と外腕があり、その中に合計10種以上のATPase活性を持つ重鎖が存在する.本研究では、各重鎖の機能に迫る目的で、2方向の研究を行った.一つはダイニン重鎖を部分的に欠損したクラミドモナスの変異株を単離する試みである.外腕に関しては、今年度はβ重鎖のC末部分を大きく欠失した変異株を単離し、この重鎖がα重鎖にくらべて外腕全体の働きに重要であることを示した.またβ重鎖が軸糸横断面内で見たダイニン外腕像においてほぼ中央に位置することも明らかになった.内腕に関しては重鎖の一部を欠損した新種の変異株2種を単離し、現在同定されている内腕重鎖7種のうち5種は運動性の発現に必須ではないことを明らかにした.次に2番目の方向の研究として、単離精製したダイニン内腕重鎖の機能を試験管内で検定する試みを行った.抽出したダイニン内腕をイオン交換クロマトグラフィで7つの分子種に分け、それぞれをスライドグラスに塗布して微小管滑走能を調べたところ、その7分子種のうち6つに運動を生じる活性があることがわかった.最大運動速度は2μm/秒から11μm/秒まで様々であった.興味深いことに、その6種のうち5種に微小管を回転させる活性があった.一方、外腕ダイニンや、内腕の1種はin vitroでは運動活性を示さなかった.これらの結果は、鞭毛ダイニンが機能的に多様であることを示している.これらがどのように協調して鞭毛運動を発生しているかが今後の大きな問題である。
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[Publications] Sakakibara,H.: "A Chlamydomonas outer arm dynein mutant with a truncated beta heavy chain." Journal of Cell Biology. 122. 653-662 (1993)
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[Publications] Kato,T.: "Isolation of two species of Chlamydomonas reinhardtii flagellar mutants,ida5 and ida6,that lack a newly identified heavy chain of the inner dynein arm" Cell Structure and Function. (印刷中).