1994 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト染色体のDNA複製に要求されるヘリカーゼの単離
Project/Area Number |
04454612
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Research Institution | NARA INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
釣本 敏樹 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (30163885)
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Keywords | 複製タンパク質A / DUE配列 / 複製フォーク / DNAヘリカーゼ |
Research Abstract |
複製に必要とされるDNAヘリカーゼの検索をヒト培養細胞より行なった。これまで真核生物から複数のDNAヘリカーゼが単離されているが、複製に要求されるものは明らかにされていない。そこで複製に要求される活性ということに視点を置いてDNAヘリカーゼ検索を行うために以下の方法を確立した。 1.DNAヘリカーゼ依存的にDNA合成を開始するDNAアンワインディング配列をクローニングし、DNA合成活性に基づいてDNAヘリカーゼの機能を検索する。 2.一本鎖DNA結合タンパク質、RPAを反応に加え、この複製タンパク質依存的DNAヘリカーゼを検索する。 3.DNAヘリカーゼ基質を改良し、反応進行の連続性(processivity)の高いDNAヘリカーゼを検索する。 これらの方法を使いDNAヘリカーゼを検索した結果、ヒト培養細胞の核抽出液よりDNAヘリカーゼを一種、見いだした。核からの抽出様式から、このDNAヘリカーゼは細胞核に強く結合していると考えられたので、DNAヘリカーゼn(nuclear)とした。DNAヘリカーゼnは、沈降係数9.2S、見かけ上の分子量190kDaを示した。ATPとのクロスリンク反応によりこのDNAヘリカーゼのATR結合ペプチドは110kDaであることが分かった。DNAヘリカーゼの反応の方向性は、3′->5′であり、各種ヌクレオチド三リン酸の活性への要求性は、ATPで高い活性を示すが、dATP存在下ではさらにATPの4倍の高い活性を示すという特徴を持っていた。DNAヘリカーゼnの活性はヒト由来のRPAに依存しているのに対し、由来の異なる一本鎖DNA結合タンパク質、E.coilのSSBとT4ファージのgene32タンパク質では逆に阻害が観察された。したがってこの酵素はRPAと特異的な相互作用をすることにより活性を持つと考えられる。以上の特性を判断すると、既存のDNAヘリカーゼに対応するものがなく、DNAヘリカーゼnは新規のものと考えられる。特に複製タンパク質であるRPAに依存する点は、このDNAヘリカーゼが複製に関与することを強く示唆するものである。
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[Publications] R.A.Pack: "Isolation of human DNA-unwindingelements as sites of DNA polymevased/primase entry" Gene. 148. 277-284 (1994)
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[Publications] 釣本敏樹: "真核細胞のDNA複製開始" 蛋白質・核酸・酵素. 39. 1667-1672 (1994)
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[Publications] 釣本敏樹: "複製タンパク質A" Medical Immunology. 28. 141-146 (1994)