1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04455002
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Research Institution | FUKUSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鈴木 浩 福島大学, 行政社会学部, 教授 (20124589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 岩夫 大阪市立大学, 法学部, 助教授 (80154037)
阿部 成治 福島大学, 行政社会学部, 助教授 (50044566)
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Keywords | 家族補助 / 住宅給付 / 所得制限 / 特定優良賃貸住宅制度 / 貧困の罠 / 補助率の傾斜 / 資産評価 |
Research Abstract |
本年度は、とくに(1)わが国における家賃補助制度の運用状況とその評価、(2)イギリスにおける住宅給付制度(housing benefits)の運用とその評価、の2点を中心に研究を進めた。 (1)わが国における家賃補助制度の運用状況とその評価 東京都特別区のうち家賃補助制度を発足させている18の区について家賃補助制度についての基本的な枠組みを把握した上で、新宿区、渋谷区、江戸川区の3区について担当者へのヒアリングを行った。それぞれ発足してまだ数年であるが担当部局による制度そのものについての評価が微妙に差異を生じていることがわかった。つまり、なおその有効性を積極的に受けとめ今後も維持していくことが重要であるという区の他に、公営住宅等のように公共投資の成果がモノとして残らないことについて不安を抱き始めている区が出始めている。家賃補助と民間賃貸住宅の質向上が明確な形で連動していないこと、さらに賃貸住宅経営についての社会的なコントロールが形成されていないことによる家賃補助制度の確かな効果が把握し切れないという弱点があることを示しているといえるであろう。 (2)イギリスにおける住宅給付制度(housing benefits)の運用とその評価 イギリスの家賃補助は住宅給付制度として展開されているが、公営住宅居住者に対する家賃割引と民間賃貸住宅居住者に対する家賃手当とに分れている。現在この家賃補助制度に対して、次のような問題点が指摘されている。(1)貧困の罠(poverty trap)-所得上昇にともなう家賃補助率が傾斜的に低減されるが、それが急激な低減率のために所得を上げようという労働意欲を減退させてしまうというもの。(2)資産評価(capital test)-資産評価には預金が含まれ、これについても預金額の上昇にともなう補助率の低減があるため、貧困の罠が待ち受けている。(3)非扶養者の同居による補助削減-非扶養者が同居すると補助が削減されるために家族の不本意な別居も発生させている。(4)申請に対する行政対応の遅延-家主への印象も悪くなり、中には借家人募集を「家賃補助申請をしていない人」に限るというケースも出てきている。
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Research Products
(1 results)