1993 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類のゲノミック・インプリンティングに関わる遺伝子群の解析
Project/Area Number |
04455013
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石野 史敏 東京工業大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (60159754)
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Keywords | ゲノミック・インプリンティング / cDNAライブラリー / PCR / サブトラクション |
Research Abstract |
哺乳類の個体発生において、父親から由来したゲノム(遺伝子のセット)と母親から由来したゲノムが異なる役割をはたしていることが知られている。このため哺乳類では両方由来のゲノムが揃わないと正常な個体発生ができない仕組みになっている。このように由来した親の性別をゲノムが記憶するために起こる現象をゲノミック・インプリンティングと呼んでいる。ゲノミック・インプリンティングの成立機構や、どのような遺伝子群がこの現象の支配下にあるのかを知ることは、哺乳類の発生機構の解明に重要なことである。 我々の研究は、このゲノミック・インプリンティングに関係する遺伝子群を体系的にスクリーニングすることにより、この現象の生物学的意義を解明することを最終目標にしている。平成4〜5年度における本申請課題では体系的なスクリーニングのシステムを作り上げるため、遺伝子増幅法を利用した新しい遺伝子のサブトラクション法の開発を行った。新しい遺伝子はまだ得られていないが、この方法によりゲノミック・インプリンティングに関係する遺伝子が特異的に濃縮された遺伝子ライブラリーが完成し、現在まさに目的遺伝子群の体系的な分離を行っているところである。 実際の実験としては、マウスを材料に、正常受精卵(雌雄両方のゲノムをもつ)と、実験的に作製した単為発生卵(雌のみのゲノムをもつ)のそれぞれから9日胚を取り出し、これからcDNAライブラリーを作製する。このとき出発材料が極微量であるので、全てのcDNAの両端に専用のリンカーを接続しこれに的な相補的なプライマーによってcDNAライブラリー全体を増幅した。また二つのライブラリーにおいて異なるリンカーを用いることにより、サブトラクション後のcDNAを特異的に濃縮できた。本方法は、ゲノミック・インプリンティングのみならず、材料の得難い種々の重要な実験に応用されうる画期的なものであると確信している。
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