マウス系統特異抗体を用いたキメラマウス組織の解析と認識抗原遺伝子のクローニング

1992 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 04455028
• Research Institution: The Institute of Physical and Chemical Research
• Principal Investigator: 日下部 守昭 理化学研究所, 真核生物研究室, 副主任研究員 (60153277)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 馬場 忠 筑波大学応用, 生物化学系, 講師 (40165056)
• Keywords: キメラマウス / 細胞系譜 / マウス系統特異抗体 / 遺伝疾患モデル動物 / ストレス蛋白 / ミトコンドリア / キメリズム

Research Abstract

1)各臓器の発生に伴うキメリズムの変化:BALB/cとC3H系統間でキメラを作成し、発生に伴う脳のキメリズムの解析を行なった結果、クローナルなマトリックス細胞集団から生み出された神経細胞は常に脳室面に垂直な方向に移動するとは限らず、水平方向の移動を経て大脳皮質の異なる領域に移動することがあることが解った。
2)遺伝背景がキメリズムに及ぼす影響:近交系とF1などの雑種系統間のキメラでは雑種細胞のほうが常に優勢であった。これらを更に詳細に検討するためにCSA遺伝子を導入したコンジェニックマウスを作成して現在繁殖飼育中である。
3)正常マウスと遺伝疾患マウスとのキメラマウス:C3Hマウスとpcdマウス間でキメラを作成した。しかし、繁殖試験の結果、キメラマウス個体を形成する疾患系統由来細胞は全てヘテロであり、現在、ホモ個体とのキメラ作成を行なっている。
4)マウス系統特異抗原遺伝子のクローニング:抗CSA単抗体をプローブとして、C3H腎臓臓由来のライブラリーをスクリーニングして陽性クローンを得た。塩基配列の解析により、CSAは697残基のアミノ酸から構成されるタンパク質であることが明らかとなった。そのアミノ酸配列は、一連のHSP70ストレスタンパク質と非常に高い相同性を保持しており、そのタンパクのアミノ末端には約50アミノ酸残基よりなるリーダーペプチドが見い出された。おそらく、この配列がミトコンドリアへの輸送シグナルとして機能しているとおもわれる。ノーザンブロット分析を行なったところ、抗CSA単抗体と反応しないマウス系統の腎臓でもほぼ同じサイズのCSA転写物を確認することができた。以上、マウス系統間でエピトープの構造変化があることが示唆された。

Research Products

• [Publications] Kawakatsu,H,Shiurba,R Obara,M.Hiraiwa,H.Kusakabe,M.Sakakura,T: "Humancarcinoma cells synthesize and secrete tenascin in vitro." Japan.J.Cancer Res.83. 1073-1080 (1992)
• [Publications] Takeda,H.Yoshiki,A.Nishikawa,S-I.Nishikawa,S.et al.: "Expression of c-kit,a proto-oncogene of the murine W locus in cerebella of normal and neurological mutant mice:Immunohistochemical and in situ hybridization analysis." Differentiation. 51. 121-127 (1992)
• [Publications] Atsumi,T.Miwa,Y.Eto,Y.Sigino,H.Kusakabe,M.Kitani,H.Ikawa,Y.: "The activin A-dependent proliferation of PCC3/A/1 embryonal carcinoma cells in serum-free medium." Devel.Growth.Differ.35. 81-87 (1993)
• [Publications] Hiraiwa,N.Kida,H.Sakakura,T.Kusakabe,M.: "Induction of tenascin in cancer cells by interactions with embryonic mesenchyme mediated by a diffusible factor." J.Cell Sci.(1992)