1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04556042
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 迪雄 東京大学, 農学部, 教授 (30011943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 茂実 東京大学, 農学部, 助手 (80219526)
西原 真杉 東京大学, 農学部, 助教授 (90145673)
東條 英昭 東京大学, 農学部, 助教授 (20041668)
舘 鄰 東京大学, 農学部, 教授 (30011711)
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Keywords | トランスジェニックラット / ハイブリッド / 成長ホルモン / 乳清酸性タンパク / 成長ホルモン受容体 / 性成熟 / 生殖周期 / 代謝 |
Research Abstract |
本研究の目的は、臓器特異的にホルモン、およびその受容体を発現する2系統のトランスジェニック動物を作出し、それらのハイブリッド体の当該臓器にホルモン作用が強く発現する個体を求めるという技術を確立し、有用形質転換動物作出に伴う生殖や代謝の異常などの諸問題の解決を目指すものである。初年度である本年度は、ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子をマウス乳清酸性タンパクのプロモーターに結合させた遺伝子をラットに導入し、高レベルおよび低レベルのhGHを発現する2系統のトランスジェニックラットを作出することに成功した。これらのラットでは血中へのhGHの持続的な分泌が起こっており、高レベルのhGHを発現する系統では体成長の促進も観察された。また、プロモーターの機能を反映すると考えられる乳汁中へのhGHの分泌も確認された。さらに、両系統ともに性早熟が起こることが判明し、性成熟は体重に相関するという従来の通説に反して、GHは体成長に対する作用とは独立に性成熟に対する促進的作用を有することが示唆された。性成熟後においても、齧歯類特有の短い性周期の消失(高hGH系統)、あるいは交尾刺激による機能黄体の成立不能(低hGH系統)などの生殖機能異常が観察され、これらはいずれも齧歯類動物に対するhGHのプロラクチン作用によるものであることが明かとなった。これらのラットではさらに、脂肪の蓄積、血中ブドウ糖、トリグリセリド、脂肪酸、インシュリンの上昇などが観察され、これらは中枢によって制御されないGHの持続的分泌に生態がさらされるために起こる一種の病態であると考えられた。このようなラットにおける生理学的解析が、GH遺伝子を用いたトランスジェニック家畜作出の基本戦略を立てる際に、大きな寄与をすることが期待される。さらに、本年度はヒト肝臓cDNAライブラリーの調整を行ない、次年度以降のhGH受容体遺伝子導入ラット作出の準備を進めた。
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[Publications] Yoshida,S.,Miura,R.,Noda,K.Shiota,K.,Takahashi,M.: "Translation of rat ovarian mRNA to two 20α-hydroxysteroid dehydrogenase isozymes in Xenopus oocytes" Endocrinologia Japonica. 39. 365-369 (1992)
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[Publications] Matsuyama,S.,Shiota,K.,Tachi,C.,Nishihara,M.Takahashi,M.: "Splenic macrophages enhance prolactin and luteinizing hormone action in rat luteal cell culture" Endocrinologia Japonica. 39. 51-57 (1992)
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[Publications] Lu,R.-Z.,Shiota,K.,Tachi,C.,Takahashi,M.: "Histochemical demonstration of activin/inhibin β_A-,β_B-and α-subunits in early embryos and oviduct of different strains of mice" Journal of Reproduction and Development. 38. 79-90 (1992)
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[Publications] Yamanouchi,K.,Matsuyama,S.Nishihara,M.,Shiota,K.,Tachi,T.,Takahashi,M.: "Splenic macrophages enhance prolactin-induced progestin secretion from mature rat granulosa cells in vitro" Biology of Reproduction. 46. 1109-1113 (1992)
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[Publications] 東條 英昭: "トランスジェニック動物の生産ー家畜への遺伝子導入ー" 日本畜産学会報. 64. 86-101 (1993)
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[Publications] 東條 英昭: "外来遺伝子導入技術の家畜への応用に向けて ー導入遺伝子の挿入と組織特異的発現ー" 家畜繁殖雑誌. 38. 133-142 (1992)