アジュバントを用いた経鼻接種インフルエンザワクチンの開発に関する研究

1994 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 04557026
• Research Institution: National Institute of Health, Dept.of Pathology
• Principal Investigator: 田村 慎一 国立予防衛生研究所, 感染病理部, 室長 (20100084)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 小川 浩司 北里研究所, 耳鼻咽喉科, 部長 (20160765) ; 神谷 斎 国立療養所三重病院, 小児感染症, 院長 (20024656) ; 相沢 主税 北里研究所, 技術部, 部長 (80072362) ; 小島 朝人 国立予防衛生研究所, 感染病理部, 室長 (30100077) ; 倉田 毅 国立予防衛生研究所, 感染病理部, 部長 (50012779)
• Keywords: アジュバント / 経鼻接種 / インフルエンザワクチン

Research Abstract

1993-1994年の冬期に、北里研究所、北里病院、国立予防衛生研究所関係者の間で、アジュバント併用経鼻接種インフルエンザワクチンの接種効果に関する野外実験を行った。ワクチンとしては、A/山形(HlNl)、A/北九州(H3N2)、B/バンコクの3株から成る3価ワクチンをアジュバントとして、遺伝子操作で作出した大腸菌易熱性毒素(LT)を0.5%含むそのBサブユニット(LTB^*,100μg/ヒト)を用いた。被験者を3群に分け、それぞれ現行のワクチンの皮下接種群(29人、27.8±6.8歳の女性)、ワクチンの経鼻接種群(49人、平均37.9±11.3歳)およびアジュバント併用ワクチン経鼻接種群(73人、平均35.0±12.0歳)とした。ワクチンは4週間隔で2回噴霧接種され、その4週後の血清のHI価および唾液中のIgA抗体応答によって、各々のワクチン接種群の抗体応答誘導能を検討した。抗体応答は、接種前後にHI抗体に関しては4倍以上、IgA抗体に関しては、1.4倍以上上昇したヒトを陽性者としてそれぞれの陽性率を検討した。その結果、ワクチンとLTB^*を経鼻接種した群では、ワクチンに対するHI価およぼIgA価が3株中1株以上に陽性であったヒトの割合がそれぞれ36/73(49.3%)および37/73(50.7%)で、ワクチンのみの経鼻接種群それぞれの値、15/49(30.6%)および16/59(32.7%)よりも有意に(各々P<0.04およびP<0.05)高かった。さらにどれか1つのワクチンに対して、HI価かIgAが陽性のヒトの割合は、LTB^*併用群が53/73(72.6%)で、ワクチンのみの群の陽性率26/49(53.1%)より有意に(P<0.02)上回っていた。また、皮下接種条件で3株中どれか1つのワクチンに対するHI価およびIgA価が陽性であったヒトの割合は、27/29(93.1%)および7/29(24.1%)で、経鼻接種群よりもHI価のみが有意に高かった。従って、LTB^*併用経鼻ワクチンは気道上にIgA抗体を誘導する能力が高いことが明らかであった。一方、ワクチン接種後インフルエンザの流行がなかったために、産生されたHI抗体やIgA抗体の防御効果を検討することができなかった。今後、防御効果と共にさらにIgAおよびHIの陽性率を高めるための方策が検討されねばならない。

Research Products

• [Publications] Tamura,S.‐I.et al.: "Formulation of inactivated influenza vaccines for providing effective cross‐protection by intranasal vaccination in mice." Vaccine. 12. 310-316 (1994)
• [Publications] Tamura,S.‐I.et al.: "Synergistic action of cholera toxin B subunit(and E.coli heat‐labile toxin B subunit)and a trace amount of cholera...." Vaccine. 12. 419-426 (1994)
• [Publications] Tamura,S.‐I.et al.: "E.coli heat‐labile enterotoxin B subunits supplemented with a trace amount of the holotoxin as an adjuvant for nasal influ...." Vaccine. 12. 1083-1089 (1994)
• [Publications] Tamura,S.‐I.et al.: "Effect of cholera toxin adjuvant on IgE antibody response to orally or nasally administered ovalbumin." Vaccine. 12. 1234-1240 (1994)
• [Publications] Tamura,S.‐I.et al.: "Mechanism of enhancement of the immune responses to influenza vaccine with cholera toxin B subunit and a trace amount of...." Vaccine. (in press). (1994)
• [Publications] Asanuma,H.et al.: "Cross‐protection against influenza virus infection in mice vaccinated by combined nasal/subcutaneous administration." Vaccine. (in press). (1994)