1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04557045
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西川 武二 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50051579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴森 薫 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (80117829)
清水 宏 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00146672)
橋本 隆 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20129597)
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Keywords | 先天性表皮水疱症 / 表皮水疱症 / 出生前診断 / 胎児皮膚生検 / 電顕 / 遺伝相談 / GB3 / LH7.2 |
Research Abstract |
表皮水疱症(EB)はさまざまな病型に分類されるが、Herlitz致死接合部型EB、劣性栄養障害型EB、幽門閉鎖症-接合部型EB症候群の3型は高度な皮膚所見、予後の悪さなどから出生前診断の適応と考えられている。私たち研究グループは、慶大皮膚科の遺伝相談外来を通じ、約20症例のさまざまなタイプの先天性表皮水疱症の症例を集積しえた。GB3、LH7.2などのモノクローナル抗体を用い、それらの症例を解析した結果、重症型である3例のHerlitz致死接合部型EB、1例の劣性栄養障害型EB、3例の幽門閉鎖症-接合部型EB症候群を見いだし、診断を確定した。そのうち、Herlitz致死接合部型EBについては、第一子が本症に罹患していた母親が再び妊娠した。母親は、再び悲惨な出産を繰り返すことをおそれ、妊娠の中絶を希望した。私たちは、遺伝相談外来にてその母親に出生前診断の可能性を説明したところ、両親は胎児皮膚生検による出生前診断を強く希望した。そこで、従来の計画通りエコー下で胎児の位置を確認しつつ、胎児の躯幹より皮膚生検を施行した。胎児生検皮膚を電顕的に観察したところ、皮膚基底膜には微細構造上の異常は見られず、蛍光抗体間接法による検索でもGB3抗原は正常に発現されていた。以上の結果から、現在妊娠中の胎児はHerlitz致死型EBに罹患しておらず正常であると診断した。両親は妊娠の継続を決定し、無事妊娠40週にて正常児を出産し、これまでのところ児にはまったく異常は見られていない。このように、本研究を開始しえたことにより、従来であれば両親のつらい選択により中絶されていたであろう正常な子供を、すでに一人救うことができた。他のタイプの重症型先天性表皮水疱症についても現在、出生前診断を準備中である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 清水 宏,他: "病理組織診断における電子顕微鏡の有用性 先天性表皮水疱症" 病理と臨床. 10. 358-359 (1992)
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[Publications] 清水 宏,他: "病理組織診断における電子顕微鏡の有用性 自己免疫性水疱症" 病理と臨床. 10. 360-361 (1992)
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[Publications] Shimizu,H., et al.: "The use of silver-enhanced 1-nm gold probes for light and electron microscopic localization of intra-and extracellular antigens in skin." J Histochem Cytochem. 40. 883-888 (1992)
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[Publications] Shimizu,H., et al.: "Prenatal diagnosis of tyrosinase-negative oculocutaneous albinism." Lancet. 340. 739-740 (1992)
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[Publications] 川上 民裕,他: "GB3 モノクローナル抗体により確定診断された致死型先天性表皮水疱症(Herlitz)" 臨床皮膚科. 46. 1005-1009 (1992)
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[Publications] 清水 宏: "遺伝性皮膚疾患の胎児皮膚生検による出生前診断" 皮膚科の臨床. 35. 11-21 (1993)
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[Publications] 西川 武二: "皮膚の疾患 最新の治療" 南江堂, 2 (1993)
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[Publications] Eady,R.A.J.,et al.: "Electron microscopic immunocytochemistry principles and pracice" Oxford University Press, 16 (1992)