1994 Fiscal Year Annual Research Report
クモ毒素をリ-ド化合物とする脳内興奮性アミノ酸遮断薬の開発研究
Project/Area Number |
04557100
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
入江 寛 長崎大学, 薬学部, 教授 (00025686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土岐 節 ダイセル化学, 研究所, 主任
畑山 範 長崎大学, 薬学部, 助教授 (20143000)
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Keywords | クモ毒素 / ポリアミン / 脳内興奮性アミノ酸遮断 / ペプチド性神経毒 / Nephilatoxin / ヒスタミン放出活性 / D-アスパラギン |
Research Abstract |
脳内グルタミン酸受容体に作用し、神経伝達を強力に阻害する作用を示すクモ毒素は、神経伝達機構を研究するための重要な化学種として位置付けられている。しかし、それを天然から入手することは至難である。よって合成による量的供給が強く求められている化合物である。本研究はクモ毒素の量的供給が強く求められている化合物である。本研究はクモ毒素の量的供給を可能にし、且つ類縁体の合成をも行い、神経伝達機構の解明に資することを目的とした研究である。ところで、クモ毒素の化学構造の特徴から、その合成を達成するためにはポリアミン部の導入を如何に効率的に行うか、に懸かっている。因みに、我々は日本産ジョロウグモの毒素であり、インドール酢酸を構成要素として含むネフィラトキシン(NPTX)類の合成を志向した。 我々はクモ毒素を構成するポリアミン部の構築にアミンの等価体としてアジド基を利用する方法を開発した。本法によれば合成中間体の取り扱いが簡単であり、しかも大量合成が可能と判断したからである。事実、アジド法を利用して6種類のクモ毒素の合成を世界に先駆けて達成した。また、クモ毒素の共通する構成要素の一つ、アスパラギンの非天然型のD-アミノ酸とした毒素の合成も行い、それらの生理活性を調べた。その結果、D-型アミノ酸を組み込んだクモ毒素もグルタミン酸遮断活性を示すがその生理活性の強さは天然品の二分の一にも満たないことが解った。その他、量的供給が可能となったため、生理活性の強弱も性格に判定することが出来る様なり、構造活性相関を解明する基礎的知見を集積することが出来た。以上の研究の成果は天然物化学の領域において、合成化学的に評価されるばかりでなく、神経伝達機構の解明を課題としている研究者にとって福音となるものとなろう。
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