1992 Fiscal Year Annual Research Report
薬物の組織からの汲み出し阻害を利用した脳及び腫瘍への薬物デリバリーシステムの開発-生理学的薬物速度論の応用-
Project/Area Number |
04557106
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 雄一 東京大学, 薬学部, 教授 (80090471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝川 一 帝京大学, 医学部附属病院, 助教授 (70197226)
小林 知雄 三共株式会社, 生物研究所, 所長 (70085645)
稲葉 實 癌研, 癌化学療法センター, 主住研究員 (60085636)
山崎 雅代 東京大学, 薬学部, 助手 (40240741)
鈴木 洋史 東京大学, 薬学部, 助手 (80206523)
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Keywords | 単離脈絡叢 / 脳脊髄液関門 / 脳血液関門 / AZT / DDI / vincristine / P-糖蛋白 |
Research Abstract |
(1)脳への薬物デリバリーの改善 (1)β-ラクタム系抗生物質: ^<14>C-benzylpenicillin(BZP)の単離脈絡叢へのin vitro系での取り込みは能動輸送であることが示され、その取り込みを各種β-ラクタム系抗生物質が競合的に阻害した。さらには、C^<14>-BZPを単独あるいは各種抗生物質といっしょに脳室内に投与後の脳脊髄液中の時間椎移を、速度論モデルに基づいて解析し、in vivo条件での阻害定数(Ki値)を算出した。In vitroとin vivoでのKi値はほぼ同一の値を示し、in vivo条件での汲み出し阻害の程度をin vitroより推定する道を開くことができた。 (2)抗エイズ薬:AZTやDDIなどの抗エイズ薬の脳室内/血中濃度比は、ともに0.2以下と低いことが知られている。また、この比がprobenecidの同時投与により上昇することから、脳室内から血中への汲み出し機構の存在が示唆された。この汲み出しが脳-脊髄液関門(BCSFB)、脳-血液関門(BBB)のいずれを介して生じるのかを検討するために、単離脈絡叢を用いた通り込み実験を行ったところ、DDIにのみ能動輸送機構の存在が確認できた。しかしながら、定量的にはこの機構のみで低い脳室内/血中濃度比を完全には説明することができず、BBBを介した汲み出し機構の存在が示唆された。 (2)抗癌剤の癌細胞からの汲み出しの阻害: 耐性癌細胞としてP-388細胞を用い、また正常細胞として肝細胞を用いて、抗癌剤であるvincristine(VCR)の細胞からの排出キネティックスおよび、各種阻害剤の影響について解析した結果、以下の事柄が明らかになった。(1)細胞内に取り込まれたVCRは、P-糖蛋白により能動排出を受けるか、細胞内のディーププールに移行するかのいずれかの運命をたどり両者は競合過程である。ベラパミル、シクロスポロンなどの阻害剤は、前者の過程のみを阻害する。従って、抗癌剤がディーププールに入る前に阻害剤処理をする方が効果的であることがわかった。(2)肝細胞膜上に存在するP-糖蛋白に対してよりも、癌細胞膜上のP-蛋白に対して、より高い親和性を持つ阻害剤が多いことがわかり、in vivo条件においても、阻害剤を用いることにより、多剤耐性を克服する道が開けた。
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Research Products
(1 results)