1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04610017
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 廣治郎 東京大学, 文学部, 教授 (40012984)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東長 靖 東洋大学, 文学部, 専任講師 (70217462)
飯塚 正人 東京大学, 文学部, 助手 (90242073)
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 助教授 (70152840)
|
Keywords | イスラム / 国家論 / 復興運動 / 隠れイマーム / ネオ・スーフィズム教団 |
Research Abstract |
1.補助金交付の連絡を受けて6月に研究方針を話し合う会合を持ち、これまで主として国家論的見地からイスラム共同体思想を研究してきた飯塚が基調報告を行った。その上で、秋まで各自が個別研究を行い、10月以降報告と共同討議を行うこととした。 2.6月の基調報告を受けて、10月からは以下のような研究発表が順次行われた。まず中村は、政府要人をイスラム共同体の外にある「不信仰者」と見なすことでテロをイスラム的に正当化しようとする現代のイスラム過激派運動に言及しつつ、「信仰者」とは誰かをめぐる神学論争史の検討を行った。ついで鎌田は、スンナ派とシーア派の権威のあり方の違い、とりわけシーア派の共同体論に特長的な隠れイマーム思想の意義を論じ、イラン革命に至る歴史の流れの中に位置づけた。東長は神秘主義者による教団設立を共同体思想のひとつの発露と見る立場から、特に18世紀以降大改革運動を繰り広げたネオ・スーフィズム教団の発生について分析した。また飯塚は現代イスラム国家論の系譜が大きくふたつの潮流に分類されることを示し、その根幹にはイスラム法の定義をめぐる中世以来の思想対立が存在することを指摘した。 3.以上のように多様な観点から共同体思想が論じられたが、そこで常に意識されていたのは現代イスラムの動向を思想史的発展の中でとらえようとする共通の立場であった。イスラムが政治化する原因は何よりもその共同体思想にある。本研究を通じて、その個別局面の理解はかなり深まり、比較の作業も相当進んだと言えよう。しかし、一年間ではそれぞれの思想の相互連関および相互影響の理解が不十分でもあり、今後は私的研究会により研究を続けたい。その成果は2〜3年後をめどに公表するつもりである。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 中村 廣治郎: "イスラームの科学と宗教" 岩波講座 宗教と科学2 歴史の中の宗教と科学 (岩波書店). 73-106 (1992)
-
[Publications] 鎌田 繁: "イスラームにおける権威の構造" 講座現代宗教学4 権威の構築と破壊 (東大出版会). 115-136 (1992)
-
[Publications] 鎌田 繁: "新イスラーム講座2 ハディース" イスラム世界. 39・40. (1993)
-
[Publications] 鎌田 繁: "イスラームにおける他宗教の理解ーイブン・ハズムの創世記批判" 寛容の倫理・非寛容の論理 (大明堂). (1993)
-
[Publications] 飯塚 正人: "現代エジプトにおける2つの「イスラーム国家」論" 東アラブの政治危機と社会変容(仮題) (アジア経済出版会). (1993)
-
[Publications] 東長 清: "スーフィーと教団" イスラームを学ぶ人のために (世界思想社). (1993)