1993 Fiscal Year Annual Research Report
薬師寺声明の成立過程の研究-現行の声明・儀礼に関して
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04610022
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
澤田 篤子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00101262)
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Keywords | 声明 / 仏教儀礼 / 博士 / 書伝 / 規範譜 / 薬師寺 |
Research Abstract |
1.研究経過 昨年度行なった寺誌や楽書に基づく薬師寺の儀礼の変遷に関する整理検討について、さらに『中右記』等の史料から関係する記述を抽出し補完した。これに、昨年度並行して行なった薬師寺の儀礼に関わる南都仏教諸宗の儀礼の系譜に関する整理と合わせて、薬師寺を中心とする仏教儀礼の系譜を整理検討した。ただし昨年度は江戸後期より明治期にわたる史料が得られず次年度への課題として残されたが、本年度も史料不足によりこの点については解決することができなかった。この時期の史料の出現が待たれる。一方声明に関しては薬師寺の現行の博士、声明本としては唯一の刊本とみられる『法相宗三時課誦』(明治37年刊)記載の博士、および法隆寺等南都仏教諸宗の声明で薬師寺声明と共通する声明各曲の博士の形態比較を行なった。 2.研究成果 儀礼面に関しては、『薬師寺縁起』『黒草子』『新黒草子』等の史料により、薬師寺建立以後江戸中期までの薬師寺儀礼の系統譜を試案した。ただし関わった史料の限界から平安末期より鎌倉期、および室町期が空白部分として残された。なお『日本霊異記』『三宝絵詞』等の記述より、薬師寺をはじめとする南都仏教諸宗の儀礼を支えた古代の文化的背景を考察し以上の系統譜の検証の材料とした。声明譜に関しては昨年同様、博士付き声明本の発掘が困難を究めた。したがって法隆寺・東大寺の声明譜との比較分析を行い、さらに真言声明譜、および天台声明譜にそれぞれ近接している譜(「散華」「和讃」等)を対照させることにより、薬師詩の声明譜の系譜を類推するという手順をとった。なお薬師寺経蔵には鎌倉末期と推定される博士付きの『胎蔵界念誦次第』の存在が昭和28年の時点で確認されていることがわかり、今後この文献の入手、および検討する必要がある。
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