1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04610023
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Research Institution | Hokkaido Tokai University |
Principal Investigator |
龍村 あや子 北海道東海大学, 国際文化学部, 教授 (40207064)
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Keywords | アドルノ / 批判理論 / 音楽哲学 / 民族音楽学 / 音楽社会学 / 音楽時間論 / 音楽美学 / フランクフルト学派 |
Research Abstract |
当該研究課題についての報告者の今年度の主な活動は次の通りである。1.昨年度に行った北海道哲学会での発表をもとに、「アドルノ思想における哲学と芸術」という題目で同学会機関誌に論文を執筆した。2.1992年10月にアメリカ合衆国シアトルで行われた民族音楽学会(SEM)で、“Critical Theory and Field Work:Th.W.Adorno's Theory and Ethnomusicology"(「批判理論とフィールド・ワーク:アドルノ理論と民族音楽学」)という題目で研究発表を行った。さらに、3.1993年3月26-28日にイギリスのサウスハンプトンで行われる音楽分析学会で研究発表の予定である。表題は“Analysis of Social Meaning in Music:Time Structure of the Instrumental Music as a Way of Recognition of the World"(「音楽の社会的意味の分析:世界認識の一方法としての器楽の時間構造」)であるが、内容はアドルノ理論の応用である。 以上の研究活動から次の成果が得られた。1.『美学理論』と『否定的弁証法』とを平行して読解することによりアドルノ思想における哲学と芸術との関係を明らかにした。2.SEMの発表は予想以上の反響を呼び、ドイツのフランクフルト学派の批判理論と民族音楽研究を結びつけようという筆者の意図は大いに注目された。従来非西欧社会を研究の主たる対象としてきた民族音楽研究は今日の国際化、都市化の中で、現代都市社会の音楽状況の呈する多くの問題に直面しており、アドルノの音楽理論はこの問題の研究に多くのインパクトを与えうることがわかった。3.イギリスの学会では、人間と自然との関係性が器楽の時間構造に読み取れる、というアドルノの命題を中心に、その比較文化的展開の可能性についての発表を行う。この内容は直後に論文として発表される予定である。以上、報告者としては来年度の研究の継続を大変楽しみにしている。
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