1992 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の仏教説話絵に見られる内容とその表現の諸相の研究
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04610029
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Research Institution | Nara National Museum |
Principal Investigator |
梶谷 亮治 奈良国立博物館, 仏教美術資料研究センター, 主任研究官 (40152649)
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Keywords | 説話絵 / 仏伝 / 法華経 / 華厳経 / 六道絵 |
Research Abstract |
特展「仏教説話の美術」で収集した資料を、仏伝、法華経説話関係、六道絵関係、華厳経説話関係およびその他の仏教説話関係に分類して、資料・スライド等の整理を行った。また、重要な作品については、紙焼写真を作成して研究に利用した。主として東京在の公私立美術館博物館等に所蔵される仏教説話関係の作品および文献を実地調査した。とくにもと南都永久寺に伝来した「真言八祖行状図」については、出光美術館で再三にわたり詳細な調査を実施した。また京都北野天満宮の「北野天神縁起」についても調査が可能となり、貴重な資料を収集することができた。加古川鶴林寺の太子堂壁画については赤外線写真によって現存する他の絵画との比較検討をした。なおこの間金剛峰寺所蔵の紺紙金字中尊寺経のうち、華厳経数種について見返絵の調査を行なった。 仏伝と法華経の絵画との表現内容の関連性については、予想したようにある程度確認できた。互いに同様のモチーフが重層的に影響しあっている。また六道絵は各種の間で強い相関関係があるが、そこにはまた仏伝、法華経の絵画との重層的関連も指摘できる。こうした三者の関係は我々が想像するほど独立したものではなく、かつて南都に存在した浩瀚な内容の絵巻「片岡絵」の成立事情の推測にもかかわる。 鎌倉初期の仏伝(浬槃図を含む)の表現と、明恵の『講式』との関係が指摘されるが、ここでは更に「八大霊搭名号経」などの北宋訳経が我が国平安時代後期の仏教史上に与えた影響を考えるべきだろう。また新たな中国説話文学等も同時に紹介されているのも事実で、これらが我が国仏教説話絵の表現に当然強い影響を与えたことが想像される。今後は北宋仏教史の特徴とそこで表現された絵画について知ることが重要になると思われる。
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