1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04610042
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
本田 仁視 新潟大学, 人文学部, 教授 (50124623)
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Keywords | 眼球運動 / サッケード / 視空間の安定性 |
Research Abstract |
1.眼球や頭部が動くと、それとともに、眼球の網膜上に投射された外界の映像(網膜像)も動く。視覚系が、眼からの入力を処理するためには、連続して変化する網膜像の情報を、眼球をはじめとする身体運動に関する情報や、その他の視覚的・認知的情報などの手がかりに基づいて、時間的・空間的に統合する必要がある。本研究では、とくにサッケード眼球運動時における視空間の安定性の問題をとりあげて、眼球運動生起時における視覚情報の時空間的統合のメカニズムを明らかにすることをこころみた。 2.本年度は、まず、サッケード生起に伴う視覚世界の急激な動きが、視空間の安定性にどのような影響を及ぼしているかを検討した。その方法として、一方では、サッケードが実際に生じた時に光点を瞬間提示して、その光点の位置の判断の成績を調べ(眼球運動条件)、別の実験条件では、被験者が一点を注視している状態で、その視野をサッケード状に急激に動かし、その時に瞬間提示された光点の位置判断の成績を検討した(視野運動条件)。後者の条件では、眼球は静止したままであるにもかかわらず、視野の網膜像が、眼球が動いた時と同様に動いた。それゆえ、網膜像の移動という要因の効果を純粋に取りだせると考えられる。実験の結果によれば、両条件での光点の定位成績は明確に異なることが示された。定位のエラーは、眼球運動条件よりも、視野運動条件でむしろ大きかった。この結果は、(1)サッケードにともなう視空間の安定性の崩壊は、網膜像の急激な動きという要因だけでは説明できないこと、さらに、(2)視空間の安定性の確保に、眼球運動がむしろ積極的な役割を果たしていることを示唆している
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